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抗うつ薬の作用発現には海馬歯状回ドパミンD1受容体が重要であることを発見

久留米大学医学部薬理学講座の首藤 隆秀講師、西 昭徳教授らの研究グループは、うつ病などの治療に用いる抗うつ薬の作用を強めるためには、脳の海馬歯状回のドパミンD1受容体シグナルの増強が重要であることを発見し、その結果が12月10日にNature系医学誌「Molecular Psychiatry」で発表されました。

https://www.nature.com/articles/s41380-018-0316-x

抗うつ薬は、セロトニンなどのモノアミン(神経伝達物質)の再取り込みを阻害することで脳内のモノアミンを増加させて精神を安定させたり、海馬歯状回における神経新生を促進したりすることがわかっていますが、詳細な作用機序は不明です。また近年、抗うつ薬により海馬歯状回の成熟顆粒細胞が未成熟な顆粒細胞に類似した状態に変化することが報告されましたが、抗うつ作用との詳細な関係は明らかになっていませんでした。そこで本研究グループは、抗うつ薬によって海馬歯状回で発現が誘導されるドパミンD1受容体と抗うつ作用との関係について研究を行いました。

マウスに抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)フルオキセチンを2週間投与して脳内の遺伝子の発現を解析したところ、海馬歯状回の顆粒細胞のみにおいてドパミンD1受容体の発現が著明に増加していました。ドパミンD1受容体にドパミンが結合すると神経が活性化されるため、ドパミンD1受容体の発現増加は顆粒細胞興奮性の亢進、ストレスに対するセロトニン応答の抑制、神経新生の促進につながり、その結果、ストレスを受けたマウスのうつ様行動の改善が見られました。

強いストレスを受けたマウスでは、フルオキセチン単独ではうつ様行動の改善は認められませんでしたが、フルオキセチンとドパミンD1受容体刺激薬を併用すると、ドパミンD1受容体の発現が増加してうつ様行動の改善が認められました。

この研究により、海馬歯状回のドパミンD1受容体は抗うつ薬の作用発現に重要であり、ドパミンD1受容体の活性化は抗うつ薬の治療効果を改善することが明らかになりました。海馬歯状回のドパミンD1受容体を標的とした薬物療法は、抗うつ薬の治療効果を高めるため、抗うつ薬が効かない治療抵抗性うつ病の有効な治療法になると考えられます。

 

説明図