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【研究成果】小児クローン病の血液診断マーカーを明らかに

世界で初めて

久留米大学医学部小児科学講座の水落建輝講師と久留米大学病院炎症性腸疾患センターの光山慶一教授、株式会社医学生物学研究所(MBL)を中心とする研究グループは、小児炎症性腸疾患を血液で診断する多施設研究を行い、血清ACP353が小児クローン病の診断に有用であることを明らかにしました。当研究は、過去最大規模で本邦の小児炎症性腸疾患の血液診断マーカーを検討し、その研究成果が2020年1月24日に専門英文誌のJournal of Gastroenterology(オンライン版)に掲載されました。

炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎とクローン病の2つに大別され、腸などの消化管に炎症が起き、慢性的な下痢や血便、腹痛などの症状を伴う病気の総称で、近年、日本でも増加しています。現在では潰瘍性大腸炎とクローン病を合わせて30万人の患者がいると報告され、本邦で最も多い特定疾患(指定難病)となっています。小児でも炎症性腸疾患は増えていますが、診断には消化管内視鏡検査が必須のため、体の小さな小児には検査の負担が大きい問題点があります。血液検査など体に負担の少ない診断マーカーが小児では特に望まれていましたが、今回、本邦における小児クローン病の血液診断マーカーとして、ACP353という抗体が有用であることを世界で初めて明らかにしました。

研究内容

-血清ACP353の小児クローン病診断における有用性:前方視的多施設研究-

背景

クローン病(CD)診断の血清マーカーとしてanti-Saccharomyces cerevisiae antibodies(ASCA)の有用性が欧米から報告されている。しかし、アジア人におけるASCAの感度特異度は白人に比べ劣ると報告されており、日本人に合った新規血清マーカーの開発が期待されていた。本邦のMitsuyamaらは、CDの血清中に特異的な抗体であるantibodies to Crohn’s disease peptide 353(ACP353)を同定し、成人の多施設研究でCD診断の感度63%、特異度91%であることを報告した(J Gastroenterol 2014)。これはASCAよりも優れた結果であったが小児の報告はない。一方、血清抗体であるanti-glycoprotein 2 antibodies(GP-2)とASCAの小児CD診断における有用性が欧米から報告されているが、本邦の小児CDで検討した報告はない。

目的

ACP353、ASCA、GP-2の日本人小児CD診断における有用性を比較検討する。

方法

対象は2016年11月~2018年2月(16か月間)に、共同研究12施設を受診した16歳以下の小児。CD、潰瘍性大腸炎(UC)、その他腸疾患、健常、以上の4群に分けて血清を採取した。医学生物学研究所が開発した手法(ELISA)によりACP353を測定した。それに加えてGP-2とASCAも測定し比較検討した。

結果

最終解析対象は、CD 120例、UC 148例、その他腸疾患 56例、健常 43例、以上の計367例。ACP353の値(中央値U/ml)は、CD(2.25)がUC(1.1)、その他腸疾患(1.1)、健常(1.1)より有意(全てP<0.001)に高かった。CDの診断精度に関しては、特異度95%の条件で、ACP353の感度は 45.0%で、GP-2(30.8%;P=0.023)とASCA(26.7%;P=0.017)より有意に高かった。

結論

ACP353は本邦の小児CD診断の血清マーカーとしてGP-2やASCAより有用であった。

今後の展望

本邦における小児クローン病の血液診断マーカーの開発につながり、体の小さな小児に負担の少ない方法で診断が可能になることが期待される。