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ミトコンドリア病「MELAS」に対するアルギニン治療の長期有効性を証明

久留米大学医学部小児科学講座の古賀靖敏教授の研究グループは、ミトコンドリア病の「MELAS」と呼ばれる病型に対するアルギニン治療の長期有効性を世界で初めて証明し、その研究成果がJournal of Neurologyに掲載されました。

ミトコンドリア病は、ミトコンドリアのエネルギー産生系酵素の遺伝的異常によって引き起こされる疾患であり、特定難病に指定されている、世界でも未だ治療法が確立されていない難治性の遺伝性進行性疾患です。

ミトコンドリア病には種々の病型がありますが、最も多いのは小児期に発作性の頭痛、嘔吐、痙攣等を起こして発症する「MELAS」と呼ばれる病型です。この脳卒中様発作症状に対して適切な治療がなされないと症状は遷延し、神経後遺症をきたしますが、未だに有効な治療法は世界でも存在しません。

古賀靖敏教授は、世界に先駆けてMELASに対するアルギニンの有効性を発見、報告しました(Neurology 2002, Neurology 2005, Neurology 2006)。その後、厚生労働科学研究効果的医療技術の確立推進臨床研究事業および日本医師会治験推進研究事業の研究採択を得て、2008年12月15日から(1)MELASの脳卒中様発作急性期の症状治療を目的としたアルギニンの静注試験、(2)発作寛解期における脳卒中様発作の予防もしくは重症度軽減のための内服試験の2つの医師主導治験を開始しました。その結果、残念ながら、医師主導治験の結果のみでは、有効性を証明できませんでした。そのため、治験エントリー患者全員の9年間の経過観察を実施し、その結果を98名のMELASの自然歴コホート研究と比較検討しました。

研究では、アルギニンの静注試験及び内服試験にエントリーした患者延べ23名全員について、その後 7年間(トータル9年間)の追跡調査を行いました。その結果、アルギニンは、有意にMELAS患者の寿命を延長する事を明らかにしました。また、死亡例はあるものの、寝たきりの患者は一人もいませんでした。この事から、脳卒中様発作時のアルギニンの静注および発作緩解期のアルギニンの内服を長期に行う事で、MELAS患者の寿命を延長でき、ADL(日常生活動作)を有意に改善する事が可能となることが証明されました。

本研究は厚生労働科学研究効果的医療技術の確立推進臨床研究事業および日本医師会治験推進研究事業で行った治験研究の集大成です。

今後は、この研究成果をもとに、ミトコンドリアの脳卒中様発作の世界初の治療薬について、厚生労働省への承認申請を目指します。

 

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