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【研究成果】非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する新たな治療薬を発見

本学医学部内科学講座内分泌代謝内科部門の蓮澤奈央助教・森山芳則客員教授・野村政壽教授を中心とする研究グループは、骨粗鬆治療薬であるクロドロン酸が、動物モデルにおいて非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を抑制することを明らかにしました。

当研究は、現在承認された治療薬が存在しないNASHに対する新たな治療薬開発に直結する可能性があり、専門英文誌のScientific Reports 誌に、3月4日19時 (日本時間)掲載されました。

研究成果のポイント

  • メタボリックシンドロームの増加に伴い、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)※1が急増し、その有病率は世界の人口の約25%にのぼります。

  • NAFLDを放置すると、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝硬変へと進行し、一部は肝細胞癌を発症します。NAFLDを原因とした肝細胞癌の発生は増加傾向にあり、世界の様々な地域で2030年までに約2倍になると考えられています。しかしながら、現在その有効な治療薬は存在しません。

  • 今回、第一世代ビスホスホネート製剤であるクロドロン酸が、NAFLD、NASHに対する有効な治療薬となりうることを見出しました。

  • クロドロン酸は、アデノシン3リン酸(ATP)の細胞外への分泌を制御する小胞膜上のトランスポーター・VNUT※2を阻害することにより、NASHにおける肝脂肪蓄積と炎症、線維化という複数の側面を同時に抑制しました。

  • クロドロン酸は、オーストラリアやカナダでは骨粗鬆症治療薬として承認されており、既に人への投与の安全性が確かめられています。ドラックリポジショニング※3によるNASHの新たな治療薬開発が期待されます。

クロドロン酸

概要

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、いわゆる脂肪肝は、メタボリックシンドロームの中心的病態です。その一部はNASHに進展し、肝硬変や肝細胞癌を引き起こします。NASHの発症には様々な要因が関与していますが、中でも細胞の外に分泌されたアデノシン3リン酸(ATP)は、炎症や線維化の重要な原因となることが明らかになって来ました。骨粗鬆薬であるクロドロン酸は、ATPの細胞外への分泌を制御するVNUTを強力に阻害します。今回の研究では、NASHの動物モデルにおいて、クロドロン酸が脂肪肝・炎症・線維化というNASHの主要な病態を同時に抑制することが示されました。クロドロン酸は、オーストラリアやカナダでは現在も使用されている骨粗鬆症治療薬であり、適応拡大により、NASHの新たな治療薬開発が期待されます。

詳細

【ジャーナル名】 Scientific Reports (オンライン版)

【発行日】2021年3月4日

【タイトル】Clodronate, an inhibitor of the vesicular nucleotide transporter, ameliorates steatohepatitis and acute liver injury
https://www.nature.com/articles/s41598-021-83144-w

【著者名】Nao Hasuzawa, Yoshinori Moriyama, Masatoshi Nomura, et al.

用語説明

※1 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓での表現形であり、その有病率は世界の人口の約25%に登ります。NAFLDの一部は、進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を呈し、肝硬変、肝細胞癌の原因となります。ウイルス性肝炎の減少に伴い、肝癌の原因に占める、NAFLDの割合も上昇傾向にありますが、現行で承認されたNASH治療薬は存在せず、開発が急務となっています。

※2 小胞性ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)

 ATPを分泌小胞内に輸送するトランスポーターであり、細胞外ATPによる様々なシグナルの伝達を制御しています。これまでに、肝細胞、神経内分泌細胞、炎症細胞、腸管上皮、ケラチノサイト等多くの組織と細胞で発現と機能が報告されています。クロドロン酸は、VNUTの強力な阻害薬であり、これまで知られていた骨粗鬆症抑制作用に加えて、神経細胞や炎症細胞のVNUTを阻害することにより、強い抗炎症効果、鎮痛効果を持つことが明らかになって来ました。今回の研究では新たに、クロドロン酸が肝臓における炎症と脂肪の蓄積を抑制することが示されました。

※3 ドラッグリポジショニング

既存薬再開発とは、ヒトでの安全性や体内動態が確認されている既承認薬について、新たな薬効を見出し、別の疾患に対する治療薬として開発する手法です。この手法では、安全性評価などのいくつかの試験をスキップでき、又薬剤の製造方法が確立しているため開発期間の短縮・研究開発コストの軽減が期待できます。