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【研究成果】膵臓癌を検出するAI(人工知能)を開発

本学医学部病理学講座の矢野博久教授、大学病院病理部 秋葉純教授内藤嘉紀准教授らを中心とする研究グループ※1は、全国の膵臓病理専門医を有する医療機関およびメドメイン株式会社 (Medmain Inc.)と共同で、超音波内視鏡下穿刺吸引生検病理組織標本における膵腺癌を検出する人工知能の開発に成功し、本研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版で公開されました。

論文では、膵腺癌の検出において、ROC-AUC※2が0.98、正解率94%、感度0.93、特異度0.97という極めて精度の高い結果が得られ、病理医による検証の結果、十分な妥当性もあることが検証されました。

研究成果のポイント

  • 久留米大学病院は、地域医療における膵癌診療の最前線として機能しています。その診療を行う上で重要な病理診断は、超音波内視鏡下穿刺吸引生検を中心に実施されていますが、得られる組織検体は極少量であるため専門性の高い病理診断となっています。そこで、久留米大学病院、及び全国の膵臓病理専門医を有する医療機関、メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)で多施設共同研究グループを形成し、人工知能開発を行いました。

  • 本研究では久留米大学病院が膵超音波内視鏡下穿刺吸引生検標本を提供し、標本をデジタル化したのちに、深層学習のための教師データを、全国多数の共同研究施設の病理医が作成し、深層学習を行なうことで人工知能を開発しました。開発した人工知能は、久留米大学で別途用意したデジタル標本のうち、3名の膵臓を専門とする病理医により診断のコンセンサスが得られた症例を検証症例として用い、精度の検証を行いました。

  • さまざまな形の人工知能が病理診断をサポートできるシステムが構築されていくことで、患者様への適切な診療提供の基礎となる病理診断精度が安定することが期待されます。研究イメージ

概要

超音波内視鏡下穿刺吸引は、胃や十二指腸などの消化管から超音波内視鏡で粘膜下や壁外の病変あるいは胸腹部や骨盤内の腫瘤を観察し、消化管内から針を穿刺して細胞を採取する方法です。日本において膵癌の罹患率・死亡率はともに増加しており、患者に症状が出たときにはすでに進行していることがあります。このことから、膵臓は沈黙の臓器とも呼ばれています。

治療方針の決定には、正確な画像診断と共に、病理細胞学的な診断が必要です。超音波内視鏡下穿刺吸引法は欧米を中心に普及してきた経緯がありますが、2010年に保険適用となったことを受け、国内でも普及し始め、現在は膵癌診断の主流になりつつあります。超音波内視鏡下穿刺吸引法により採取された細胞組織断片は微小であり、病理診断に難渋する症例もあります。

今回の研究の目的は、超音波内視鏡下穿刺吸引生検病理組織デジタル標本において、膵腺癌の検出を可能にする人工知能を、深層学習を用いて開発することにあり、今後この成果を活用した膵臓癌検出のシステム構築が進むことが期待されます。

詳細

【雑誌名】「Scientific Reports」オンライン版
【公開日】2021/4/14 
【論文名】A deep learning model to detect pancreatic ductal adenocarcinoma on endoscopic ultrasound-guided fine-needle biopsy Scientific Reports
日本語訳:超音波内視鏡下穿刺吸引生検病理組織デジタル標本における膵癌の検出を可能にする深層学習を用いた人工知能の開発
DOI:https://www.nature.com/articles/s41598-021-87748-0
【著 者】Yoshiki Naito, Masayuki Tsuneki, […]Hirohisa Yano

研究グループ・用語説明

※1 【研究グループ関係者】

<久留米大学 医学部 病理学講座> 矢野 博久
<久留米大学病院 病理診断科・病理部> 秋葉 純、内藤 嘉紀
<自治医科大学 病理学・病理診断部> 福嶋 敬宜
<九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学> 小田 義直、山田 裕一
<九州がんセンター 病理診断科> 古賀 裕
<鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 病理学分野> 東 美智代、野口 紘嗣
<倉敷中央病院 病理診断科> 能登原 憲司、内野 かおり、板倉 淳哉
<佐賀大学 医学部 病因病態科学 診断病理学分野> 相島 慎一
<佐賀大学医学部附属病院 病理部・病理診断科> 甲斐 敬太
<静岡がんセンター 病理診断科> 大池 信之、野呂瀬 朋子
<東海大学医学部付属八王子病院 病理診断科> 田尻 琢磨
<埼玉医科大学 医学部 病理学> 山口 浩
<順天堂大学 医学部 人体病理病態学講座> 福村 由紀
<国立がん研究センター 東病院臨床腫瘍病理分野> 小嶋 基寛
<東海大学 医学部 基盤診療学系病理診断学> 平林 健一
<福岡大学 医学部 病理学講座> 濱田 義浩
<東北大学大学院 医学系研究科病態病理学分野> 古川 徹、大森 優子
<東京医科大学 人体病理学分野> 助田 葵
<久留米大学 医学部 内科学講座 消化器内科部門> 岡部 義信
<メドメイン株式会社 (Medmain Inc.)> 常木 雅之、Fahdi Kanavati
 関連サイト:
 【コーポレートサイト】 https://medmain.com/
 【病理AIソリューション「PidPort」】 https://pidport.medmain.com/
 【Imaging Center | 病理標本のデジタル化サービス】 https://imaging.medmain.com/

※2 ROC-AUC:検査や診断薬の判別性能を示す値で、値が1に近いほど判別能が高いことを示す。