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【研究者インタビュー】医学部解剖学講座 中村 桂一郎 教授

医学部解剖学講座(顕微解剖・生体形成部門) 中村 桂一郎 教授

 

中村教授

所属部署について教えてください。

医学部解剖学講座の顕微解剖・生体形成部門で、研究と教育に携わっています。解剖学講座は、1928年の創立に始まり2講座制でしたが、2005年に1つの大講座になり、肉眼・臨床解剖部門と顕微解剖・生体形成部門から構成されています。また、センター長を務める先端イメージング研究センター(旧電子顕微鏡室)は設立50年になります。

どのようなことを行っているのですか?

顕微鏡を使った形態科学研究です。特に、顕微解剖の分野では、いくつかの科学技術イノベーションのおかげで、従来の電子顕微鏡より大きく発展した次世代顕微法「FIB/SEMトモグラフィー法」が開発され、久留米大学は2011年にFIB/SEM装置をいち早く導入しました。細胞レベルのCT立体画像のようなものです。これにより、細胞の3次元微細構造解析が可能になり、その研究成果が教育にも大いに反映できるようになりました。2018年5月には、日本顕微鏡学会の第74回全国学術講演会を地元の久留米市で開催して、AI(人工知能)を生かした顕微解析の可能性を探る討議を展開することができました。

この道に進むことになったきっかけから、これまでの歩みを教えてください。

学んだのは愛媛大学医学部でした。発足したばかりの新設医学部で、私は2期生。教員と学生の垣根が低く、学生時代から電子顕微鏡がある解剖学講座によく出入りしていました。決定的なのは、卒業の頃、尊敬する先生の「(大学院)4年間、形態学の研究をしてみては」という一言でした。基礎研究ですが、たくさんの人の命を救うために役に立つかも知れないということで、研究の世界に足を踏み入れました。愛媛大学で大学院まで10年、九州大学医学部に19年(米国留学2年含む)いて、その後、2003年に久留米大学に移り現在に至っています。

研究の様子 FIB/SEM装置
(右)FIB/SEM装置

 顕微鏡画像
FIB/SEMによる線維芽細胞の三次元再構築画像(上:垂直断面、下:ステレオペア再構築)

これまでの研究活動のなかで、特に大きな転機はありましたか?

思い返せば愛媛大学での恩師の一言が、研究者としての私の人生を方向付けたということです。実は50年程前、電子顕微鏡がいろんな研究に盛んに使われて論文がどんどん出ていた時代、久留米大学では最初期から電子顕微鏡が導入されて、山田英智先生、村上正浩先生、猪口哲夫先生らにより、世界の形態研究の発展をリードしてきた、それを外からみておりました。その伝統を受け継ぎ、久留米大学でFIB/SEMによる三次元解析に取り組んでいる今が一つの転機と感じます。

研究がすすまない時期、どうやって乗り越えましたか?

ぐっと我慢するしかありません。最近、「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉をよく耳にします。英国の詩人、ジョン・キーツが「不確実なものや未解決なものを受容する能力」として唱えた概念です。いつも正解があるわけではありません。医学・生命科学では特にそうです。できないと焦るのではなく、常に観察し、できるときやるしかない。久留米大学では周りの人々に見守っていただく中、新しい装置を導入してもらい、ほかでは出来なかったであろうことが実現しています。そのチャンスを与えてくれた久留米大学にいて本当に良かったと思います。

お仕事以外に大事にしているものはありますか?

いろんな本を読んだり音楽を聴いたりします。すると、研究につながる発想を得たりします。研究が趣味につながっている部分もあります。文字も、音も、何事も、よく観察することが大事だと思います。

現場から離れて気分転換や休日にどんなことをされていますか?

休日に家族とドライブして温泉に行ったりして過ごします。久留米は、少し足を伸ばすとあちらこちらに素晴らしい風景があり、まさかと思う山の中でお気に入りのカフェに出会ったり、癒やされます。

休日の風景 本の写真 

現場での活動をとおして、社会、人にどのようなことをもたらしたいと思いますか?

皮膚の下にあって身体全体を覆う結合組織、その主たる細胞である線維芽細胞に興味があります。身体そこらじゅうにある平べったい細胞で、切片では全体像を捉えにくいのですが、FIB/SEMによる3次元観察で、くしゃくしゃに丸めた紙を平らに延ばしたような姿が見えてきます。この細胞はいろんな病気に関連している可能性も指摘されており、身体中の線維芽細胞を見直して、少しでも人々の役に立てるよう、生体の細胞構築の妙を世に問いたいと思います。

研究者や医師を目指す方へメッセージをお願いします。

臨床では一人一人の患者さんに寄り添う医療ができること、実際にはできなくても常にそう心がけ、努力することが大切だと思います。多くのノーベル賞学者も強調されるように、基礎研究は重要です。「研究のための研究」でなく、今は訳分からなくとも、先々ヒトのためになるかも知れない、そんなことも意識できる研究を目指してほしいです。

久留米大学が「地域の『次代』と『人』を創る研究拠点大学」を目指していることについて。

電子顕微鏡室/先端イメージング研究センターは50年の歴史の中で、多くの情報をこの久留米から世界に発信してきました。形態研究の拠点として今後さらに発展してほしいと願っています。


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略歴

1980 年 愛媛大学医学部卒業
1984 年 愛媛大学大学院修了 医学博士取得
1984 年 九州大学医学部解剖学第一講座 助手
1988 年 九州大学医学部解剖学第一講座 講師
1990 年 米国オハイオ州クリーブランドケースウエスタンリザーブ大学病理学研究所留学
1996 年 九州大学医学部解剖学第二講座に配置換 助教授
2000 年 九州大学大学院医学研究院形態機能形成学分野
2003 年 久留米大学医学部解剖学第二講座 助教授
2005 年 久留米大学医学部解剖学講座顕微解剖 生体形成部門 教授
現在に至る