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【研究者インタビュー】先端イメージング研究センター 太田 啓介 教授

先端イメージング研究センター 太田 啓介 教授

所属部署について教えてください

医学部先端イメージング研究センターは電子顕微鏡室を前身とする部署です。久留米大学は全国の中でも電子顕微鏡の導入が早く、長い歴史を誇るとともに高い技術力を維持してきました。2017年、解剖学講座からセンター専任教員になり、昨年7月、教授を拝命しました。顕微鏡という特殊な技術を擁し、学内外を問わずに研究をサポートする「専門部隊」というイメージです。

太田教授

どのようなことを行っているのですか

顕微鏡を使った形態学の研究なのですが、最近のイメージングは高額な装置をつかったり、操作が難しかったりと、いろんな研究に使いたいけどすこし敷居が高いようなのです。先端イメージング研究センターでは、例えば試料作りから観察法の開発まで、形態観察の専門的な技術を備えて学内外の研究や、企業とコラボした開発などをサポートしています。特に、当センターの看板ともいえるのが、細胞内部を三次元的に見ることができる「FIB/SEMトモグラフィー」という技術です。これらの技術にできるだけ自由にアクセスし、多くの研究課題をクリアできるようにしていくことが当センターの大きな目的です。もちろん専任教員がいるという意味で、新しい技術を開発することも重要な役割です。

大学院生を中心とした教育という要素もあります。テクニックを的確に使って、正しく物を見ていく、形態科学的な指導という点でも責任を負う部署です。「FIB/SEMトモグラフィー」という他大学にない技術があるのが強みで、理研や多くの大学・企業との多数の共同研究を受け入れており、このような技術が、久留米大学のプレゼンスとして役に立てればいいなと思います。また、「理科離れ」などと言われる中、小中学生などを対象にした教室も開催しています。顕微鏡をのぞく子どもたちの目の輝きが印象的です。

FIB-SEMで撮影した画像
(FIB-SEMで撮影した肝臓ミトコンドリアの3次元像。)

この道に進むことになったきっかけから、これまでの歩みを教えてください

きっかけは2つあります。小学2年ぐらいのとき、どぶの水を集めて見ていたんですね。そうしたら、親戚のおじさんがニコンの顕微鏡をくれたんです。もう楽しくて毎日、顕微鏡をのぞいてましたね。それが最初。次は学生の時。九大農学部で昆虫の遺伝子工学を研究していていました。大学院時代、いくら生化学的に分析してもわからない課題があって、さまざまな方法を試したけどうまく行かずに「これでは学位が取れない」と苦しんでいるとき、顕微鏡で見てみると、一発で答えが出たんです。その結果、形態学で伝統がある久留米大学の解剖学講座に来ることになりました。形態好きが高じて、まさかイメージングの専門になるとは思いもしませんでしたね。

研究が進まない時期、どうやって乗り越えましたか

研究していて思うような結果が得られるのは2割程度かもしれません。もしそうなら、1つの課題に絞って必死に研究を重ねても結果が出なければ行き詰ってしまいます。しかし単純に計算しても5つの課題を持っていれば、1つぐらいは当たることになります。1つの目的に対しいろんなアプローチをして、答えが見え出したところから進めていくようにしています。

もちろん仕事が先に進まないと焦ります。特に他の研究者とコラボして期限が迫ってくる場合などがそうです。でもひとつの事象に対して常に複数の道を探るので、そのうちいくつかの枝葉から芽が出てきます。芽が出るとさらに増やして、という具合いにしていくと忙しくはなりますが、答えにたどり着きます。焦る気持ちを落ち着かせる意味でも手は動かし続けなければいけないですね。

お仕事以外に大事にしているものはありますか

もともと信州にいたので、スキーが好きでした。でも九州は雪がないので残念。今はプログラミングをしたり、ペットのインコをいつくしんだりしています。子どもの頃は50羽ぐらい飼っていましたね。その後、ジャービルというネズミも大量に飼っていたんですが、わが子が生まれたのをきっかけに再びインコを迎えました。

インコ

両親や祖母から引き継いだ3つのポリシーを大事にしています。祖母からは「自分の顔は30歳までは親の責任。30歳過ぎたら自分の責任」と言われ、常に笑っていたいと考えています。茶道をしている母は「自分の周りの人は全員が師匠」という考え方の人で、私もできるだけ周囲の方を師匠と思うようにしています。私にとって最も大きな存在の父は商人で、近江商人が言う「三方よし」の考えを持っている人です。商売にかかわる3人が3人とも得するようにしなければならないという教えで、自分でも守ってきたと思っています。

現場から離れて気分転換や休日にはどんなことをされていますか

本を読んだり、子どもと一緒にアニメを見たり、神社巡りをしたり。九州の神社は歴史と伝説に彩られて素晴らしいですね。あとはペットの相手をしています。パソコンはずっとしていて、プログラミングでウェブアプリをつくったりしています。

神社写真

現場での活動を通して社会や人にどのようなことをもたらしたいと思いますか

仏教家と研究者は似ていると聞いたことがあります。誰にも真似できないようなつらい修行を積む仏教家が托鉢などをすると、俗世の人はありがたがります。研究も好きでないとできない仕事。つらいことが多い中で、時に成果を論文で発表するんです。修行した内容を世の中に還元する仕組みというのは多分同じだと思います。研究は身近には感じられないかもしれないけど、人類の知を増やすという点で重要なことです。

研究者や医師を目指す方へメッセージをお願いします

学問に限らず、自分でものを考えるようになってほしいです。それに尽きます。厳しい受験競争社会を生きている学生は背伸びをいっぱいさせられて大学に入ってきます。その結果、自分で考えることをやめる学生もいます。自分で開拓しようとしないのは非常に残念です。特に医学部生となると覚える内容が多く、ものを考える余裕すらなくなるという傾向があります。人ともあまり議論できません。でも医師や研究者は、真剣な議論をすることで自分の考えを広げて世界を開拓して行くと思います。久留米大学では協同学習という、コミュニケーション能力の訓練を行うカリキュラムを導入しています。慣れないうちは気恥ずかしいまじめな議論も、カリキュラムの中で慣れていくと人生をきっと豊にすると信じます。しっかり考えて議論できる、そんな豊かな人間を目指してください。

久留米大学が「地域の『次代』と『人』を創る研究拠点大学」を目指していることについて

筑後地区は人が多く、多彩な産業もあります。この地域唯一の総合大学として久留米大学は非常に重要な役割を担っています。高い評価を受ける医師を育成しなければならなし、人を育てることに巧みな文系の先生方もいらっしゃるので、文医連携をうまく進めることによって良い人材を輩出することができると思います。大学という限られた資源なので、がっちりスクラムを組んだら、より良い役割が果たせると思います。


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略歴

1993 年 九州大学農学部修了
 同年4月 久留米大 学医学部解剖学講座助手
その後 講師/准教授をへて
2017年6月 久留米大学医学部先端イメージング研究センター 准教授
2019年7月  同 教授