基礎系講座

  • 解剖学

    研究について

    本領域では、ヒトやそれ以外の動物のからだの構造を解析する解剖学研究と解剖学講義や解剖学実習を通じて解剖学教育の研究を行なっています。

    解剖学研究では、系統解剖学実習中に発見された人体構造の変異の解析や比較解剖学的に他の動物の形態や発生を研究し、看護学的に重要な人体構造の研究へつなげています。また、大学院生研究として、松果体や採血などに重要な上肢の皮静脈・皮神経の研究などを実施しています。

    解剖学教育研究では、学生さんにとっては重要であるが、理解が困難なことの多い分野(心臓や脳の立体構造と機能)の理解を補助・促進するための教育教材の開発などを行い、医学教育学会等での発表を実施しています。

    教育について

    学部学生教育では、1年時「からだの構造と機能Ⅰ(前期)」と「同Ⅱ(後期)」にて人体の基礎を講義し、2年時「同Ⅲ(前期):解剖学実習」では、さらなる人体構造の知識の習得に加え、医学科系統解剖学実習に参加し、御献体と向き合うことにより、生命の尊厳や医の倫理についても学びます。

    大学院教育としては、人体構造の研究を中心に、学位取得のための講義、研究、論文作成指導だけでなく、みずから学ぶことの楽しさを知るための教育の実施や、ボランティア教育活動、教育教材開発などを共に進めます。

  • 基礎医学

    研究について

    久留米大学病院は、日本で初めて睡眠障害の専門外来が開設された医療機関であり、学長の内村直尚先生とともに、睡眠医学、睡眠疫学に関する研究を行っています。また、産業医としての活動も通して、主に労働者の健康増進を目的とした睡眠研究プロジェクトを進めています。睡眠は、内科系・外科系を問わず、体と心の様々な病気を防ぐため、そして病気を治す力を高めるための基礎となる生命活動であり、重要な生活習慣でもあります。睡眠を通した、様々な病気に対する新しい予防・改善方法を追求し、学問としての睡眠研究の発展に貢献するとともに、一人でも多くの方に睡眠の大切さを理解していただけることを目指しています。

    教育について

    基礎医学の分野では症候学、社会医学の分野では疫学と環境科学を担当しています。どの科目も「難しい」と苦手意識を持ってしまいがちなものばかりですが、医療の仕事に携わるにあたり「何故その知識が必要なのか」といった動機付けをしっかりと行うことで、積極的に学べるようになります。そうした自主性と探求心を育みながら学問を究める「本来の大学としての在り方」と、人間性や人と人との繋がりを重んじる「久留米大学らしさ」をコンセプトとして指導して参ります。

  • 基礎看護学

    研究について

    基礎看護学は看護実践の基盤となる考え方や技術などを探求する領域です。看護の対象を理解し、健康の段階に応じた看護を実践するために、個々の教員が独自の研究テーマをもって取り組んでいます。研究テーマは、看護技術に関する研究、医療安全に関する研究、看護師が遭遇する倫理的葛藤、糖尿病患者の身体活動や睡眠に関する研究、慢性疾患をもつ患者のセルフマネジメントに関する研究、在住外国人の健康に関する研究などがあります。看護教育や看護管理に関する共同研究も広く行っています。

    研究手法は目的に応じ実験、調査、インタビューなどさまざまで、新たな研究手法にも挑戦していきます。

    教育について

    主に1・2年次の科目を担当しています。看護とは何かを「看護学概論Ⅰ」で学び、「生活援助技術Ⅰ・Ⅱ」「診療に伴う援助技術」では根拠に基づいた看護技術を習得します。さらに、看護実践の思考過程を「看護過程Ⅰ」で学修します。臨地実習は、地域の20カ所以上の施設で看護活動を学ぶ「生活支援実習」、大学病院と医療センターで患者を受け持って実習する「療養生活支援実習」を担当しています。4年次科目として「看護学概論Ⅱ」では、看護の理論を紐解きながらその独自性・専門性について再考します。どの科目も協同学習の教育手法を用いて仲間とともに学びます。

  • 精神看護学

    研究について

    精神看護学では、こころの問題を抱え治療が必要になった人が、地域での生活に戻る時にどのような問題を抱えているか、またそれを支える看護師、家族がどのような葛藤を抱え支援を求めているかなど、こころの問題を抱える方のみならず、支援する人への支援の在り方について調査研究や事例検討会を行っています。

    • 精神科に入院された方の意思決定支援に関する研究
    • 精神科退院後の孤独・孤立に関する研究
    • 入退院を繰り返す成人中期患者への精神科看護師が抱く葛藤
    • 発達障害の子をもつ母親支援の研究
    • The Work Ability of People with Mental Illnesses: A Conceptual Analysis
    • Assessing Continued Employability among People with Mental Illnesses : Development of a Scale in Japan

    教育について

    1年では、発達段階ごとにこころの問題や社会問題について学習し、学生の調査・発表を通して、現在求められている支援について考えます。2年では、看護技術として、コミュニケーションや関係性のとり方など、シミュレーションやロールプレイなど体験を通して重要なスキルを学びます。3年では、精神疾患と看護、制度、社会資源など退院後の地域生活を見据え学習し、臨地実習に臨みます。実習では、対象理解を深め、支援について考えます。

  • 在宅看護学

    研究について

    地域・在宅看護学領域では、2021年医療的ケア児とその家族の支援法案が施行された社会的状況に先行し、医療的ケア児の退院移行支援及び地域における人材育成をテーマとして研究に取り組んでいます。また、地域に住む人たちの疾病の予防にも取り組んでおり、糖尿病発症の要因や予防対策についての研究も行っています。

    医療の介入を必要とする在宅療養者が増加している中、介護・保育・教育・行政などの非医療職との継続した連携が重要となります。あらゆる世代と健康段階にある人々が住み慣れた地域で暮らすための「連携」をテーマに今後も研究に取り組んでいきます。

    教育について

    まだ実際の在宅看護についてイメージすることが難しい学生に対し、実際の看護場面の映像を紹介したり、当事者である家族や支援者である訪問看護師、訪問診療医などの講師を招き、体験を通して在宅看護の意義について教育しています。また対象を「生活者」として捉えることと、地域の多職種の「連携」の在り方を、重要な教育内容の柱とし、共同学習やロールプレイなど実践力につながる学習方法を工夫しています。

  • 母性看護学

    研究について

    母性看護学領域では、「ウィメンズヘルスケア(すべての女性が、単に疾病または病弱の存在しないことではなく、一生涯をとおして、その人らしいウェルビーイングな生活をするために、オプティマルな健康を獲得し、維持することができるような支援)」に関する研究を行っています。具体的には、糖尿病をもつ女性のウィメンズヘルスケアの開発、性教育としてのピアエデュケーション活動、分娩介助技術、周産期メンタルヘルスケアなど、様々な視点で研究課題に取り組んでいます。

    教育について

    「母性看護学」は、人間の性と生殖における健康(リプロダクティブ・ヘルス)を考えていく学問です。具体的には、妊産褥婦および新生児への看護活動に加え、思春期から老年期にある女性とその家族やパートナーと子どもを対象とする看護学です。科目としては、「女性生涯看護概論」「ウィメンズヘルス論」で生涯を通じた女性と周囲の人々への健康支援の在り方を、「母子健康支援論」と「母子健康支援実習」にて、妊娠・分娩・産褥期にある女性と胎児及び新生児への看護の基礎的能力を身につけることができるよう支援しています。

  • 小児看護学

    研究について

    病院や地域で子どもと家族にかかわる看護師や大学院生を交え、実際の臨床現場で対応に困っている事例を通して考え、互いの研究に関する意見交換や、小児看護に関連したテーマのディスカッションをしています。教員自身も研究活動を通して、看護観や看護の意味を再確認し、学生さんへの教育や研究指導に反映しながら、臨床に還元できるような研究に繋がるよう自己研鑽に努めています。

    また、ADHD(注意欠如多動症)の子どもたちの学校適応力を高めることを目的とした治療プログラム「くるめSTP」(小児科主任教授が研究代表者)に医療班として参加しています。この活動は夏休み期間に開催され、看護学生のボランティアと共に、子ども達やスタッフの体調管理を行っています。

    教育について

    子どもを権利の主体者としてとらえ、子どもの最善の利益を考えるために、子どもの発達や、急性期・慢性期・エンドオブライフ期の段階、医療的ケアが必要の場合など様々な健康レベルの子どもと家族への看護について学びます。子どもがその子らしく成長発達できる環境を整え、子どもと家族のニーズや健康レベルに応じた適切な看護を実施するために必要な知識・技術・態度を習得できるように講義・実習内容を工夫しています。

  • 成人看護学

    研究について

    成人看護学領域では、感染看護、がん看護、保健行動・健康行動理論、慢性疾患を持つ患者と家族に対する支援、グローバル人材の育成と、幅広いテーマ、対象に対する研究に取り組んでいます。具体的なテーマは「がん治療中の糖尿病患者のセルフケアを支援する領域間連携システムの構築」「医療者の手指衛生遵守向上のための多面的介入の試み:国際共同研究」「生活習慣病の予防に関する研究」「多文化対応能力に関する研究」「腹膜透析を受ける高齢者と家族を支えるテレナーシングシステムの構築と検証」などがあります。研究の内容は、観察研究、介入研究、国際的な研究と多様です。教員それぞれが研究テーマを持ち取り組んでいますが、対象者の健康、QOLに資する看護の追求といったところは共通しています。全員が切磋琢磨しながら研究に励み、得られた成果を世界に発信していきたいと考えています。

    教育について

    教育では、成人期にある対象の、クリティカルな状況から慢性期・回復期・終末期までを支える看護について教授しています。フィジカルアセスメントや看護過程、家族看護と多くの関連科目も担当しており、エビデンスに基づく看護実践力を培っています。また、対象の退院後の生活を常に考え、療養の全経過において、シームレスに質の高い看護が展開できる能力を身に付けることができるような教育内容を工夫しています。具体的にはシミュレーションモデルの活用やロールプレイ等、演習を多く展開しています。さらに、実習は、病棟、手術室、高度救命救急センター、外来や医療連携室と最先端の医療が学べる大学病院、地域に密着した医療を学ぶ医療センターで行っており、学生の視野を広げています。講義・演習・実習共に、学生の主体的な学習を積極的に支援しています。

  • 老年看護学

    研究について

    現在、高齢化に伴う認知症の人の増加への取組は、世界共通の課題となっています。私たちは、2007年度より久留米市、久留米大学高次脳研究所と連携し、認知症の早期発見・早期対応に向けて「もの忘れ予防検診」を実施しています。また、久留米大学の物忘れ外来にて認知症の人や家族への支援について研究しています。近年は看護・介護領域での人材不足がクローズアップされています。様々な場で高齢者を支える看護師がこれまで培われたキャリアを活用しながら継続して働くことができるための支援の在り方についての研究も進めています。

    教育について

    高齢者一人一人が健やかに、その人らしく生活できるように専門的知識と看護技術をもった老年看護の実践者の育成を目指しています。老年看護学の授業では、高齢者の生きてきた時代的背景や個人の生活史を含めて全体像を捉え、高齢者がその人らしく本人の望む生活を営めるように健康維持・増進とともに人生の終焉まで幅広い支援の方法を学びます。

  • 地域看護学

    研究について

    地域看護領域では、地域や職場・学校現場の、健康課題の分析、活動・教育の在り方、仕組みなどの研究に取り組み、地域住民の健康増進への貢献を目指しています。現在、教員・大学院生が取り組んでいる研究テーマは、「社会的ハイリスク妊婦のヘルスリテラシ―」「労働者の感染症予防(職業感染対策)」「介護保険事業の評価」「海外渡航時の健康管理」「他害行為の予防」「精神障害者の就労継続支援」「医療的ケア児家族の療養環境整備」「医療的ケア児家族を支える多職種連携」等です。教員・大学院生間のディスカッションを通して、研究方法を学び、現場の課題を探究し、研究成果を現場に生かす能力を育んでいます。

    教育について

    地域で働く看護師と保健師の養成教育を担当しています。現代、少子高齢化、国際化、情報化が進み、人びとが抱える健康問題も多様で複雑に変化しています。これらの課題を解決するために、当事者である個人や家族を支援すると同時に、問題の原因や広がり、深刻さを見極めながら、地域社会全体に働きかけて支援する必要があります。多様な背景の人々や様々な関係者と協働する能力を育成するために、共同学習を多く取り入れ、主体的に専門職としての姿勢を身につける教育を重視しています。