研究・産学官連携の研究TOPICS 【研究者インタビュー】医学部 整形外科学講座 平岡 弘二 教授

【研究者インタビュー】医学部 整形外科学講座 平岡 弘二 教授

本学の研究活動は多くの研究者により支えられています。このシリーズでは、研究者を中心に、研究内容やその素顔を紹介していきます。

医学部 整形外科学講座 平岡 弘二 教授

所属部署について教えてください。

2022年4月1日に医学部 整形外科学講座の主任教授を拝命しました。

久留米大学医学部整形外科学講座は、今年開講90周年を迎える歴史と伝統ある講座です。本学では主に高度外傷、骨軟部腫瘍、脊椎脊髄病を担う久留米大学病院と、関節疾患やスポーツ障害などに対応する久留米大学医療センターで、幅広い診療と研究を行っています。大学病院では急性期のリハビリテーションを、医療センターでは慢性期のリハビリテーションを扱うというように、完全に病院の機能が分かれており、2つの病院で整形外科のほぼすべての症例に対応することができます。

先生の専門について教えてください

私は「骨軟部腫瘍」の研究を行ってきました。骨や筋肉などの軟部に発生する腫瘍ですが、良性のものと悪性のもの、さらにはその中間のものまで含めると、整形外科医でも区別が難しいほどの種類があります。病型が多様なため、その診断と治療には専門的な知識が重要となります。患者数は非常に少ない疾患ですが、悪性骨腫瘍に関しては10歳代の小児に発生することが多く、お子さんの一生に関わる疾患と考えています。私たちはその子たちが大人になってもずっと患者さんやそのご家族をサポートしていく姿勢で臨んでいますが、発生頻度が少ないぶん、研究や治療は他の分野に比べて遅れていると言えます。目の前で患者さんが困っているのに治療の方法がないという事例に接すると、やはり基礎研究をしっかり行い、この希少がんの治療方法の発見に貢献したいという思いで取り組んでいます。

久留米大学医学部整形外科学講座 腫瘍グループ

どのような研究をされていますか?

大学院の先生方にお願いして、例えばある病気のたんぱく質の発現がその疾患の予後に関係するかどうかというような基礎的な研究であったり、もう一つはがんの骨移転という大きなテーマを扱っているので、どういった治療ががんの骨転移の抑制につながるのかということを動物モデルで実験したり、もしくは細胞レベルで実験したりというようなこともやってきました。今後は臨床の症例データを使って、がんの骨転移については詳細に検証していくことを考えています。
 基礎研究はとても大切だと考えていますので、整形外科教室は解剖学と病理学には常に若い先生を受け入れていただいており、専門的な研究のご指導をお願いしています。

この道に進むことになったきっかけを教えてください

外科医として病理組織が見れるようになりたいという思いがあり、病理学に入ったのですが、そこで恩師の先生方に出会い、骨などの腫瘍の奥深さに惹かれると同時に、また治療の難しさを知りました。

大学院に入るときにはまだそこまでの目標はなかったのですが、卒業する頃には骨軟部腫瘍の世界で頑張ろうと思っていました。

臨床医になってからも研究は続け、30代の頃にはアメリカに留学をしました。そこでは細胞の分化を研究しましたが、研究規模や環境の違いなどを体感し、勉強はもちろんですが研究者としての姿勢や文化なども感銘を受けることが多くありました。若い研究者にはぜひ海外で多くの経験をしてほしいと思っています。

Scripps resaerch institute のラボにて
Scripps resaerch institute のラボにて
この研究で難しいことは?

骨軟部腫瘍は希少がんで患者さんの数が多くないため、大きな企業治験というものがありません。患者数の多い病気では研究も進んで治療薬が発達し、治療成績が飛躍的に向上している分野もありますが、われわれの世界は足踏みしていると思います。そのため現在は、国立がんセンターを中心とした臨床試験に参加し、症例を各施設が提供して、とにかく大きな数で症例の検討をしていくのがスタンダードになっています。

まだまだ道半ばですが、我々の研究の先には喜んでくれる患者さんがいますので、今後もしっかり取り組んでいきます。

研究が進まない時にはどうやって乗り越えますか?

一人で悩まないでみんなに相談するようにしています。臨床は一人ではできず、常にチーム医療です。研究も同じで、糸口が詰まった時にはチームに相談することで突破口が見つかることが多いです。実は昨日もやりましたが、大学院生、若い研究者を集めてそこでみんなで話し合いをしました。今詰まっているところを出して、みんなでディスカッションする。それは問題解決だけでなく、やる気を盛り上げるのにも効果がありますし、臨床も研究もチームでやる、というのが私の考えです。
 うちの医局では若い研究者もみな臆することなく思ったことを発言しています。患者さんのことや、研究のことなど、みんなでわいわいディスカッションをしているときは、仕事の楽しい時間でもあります。

最近の研究会
最近の研究会
研究を離れた休日などにされていることはありますか?

社会人になってからは山登りを楽しんでいます。基本的には夫婦で日帰り登山ですね。朝から黙々とひたすら登って頭が真っ白になるまで疲れるというのが楽しいです。若い時には卓球をしたり、ウインドサーフィンもやっていました。読書も好きですが、最近はなかなか時間が取れていません。

休日の登山(坊がつる)
休日の登山(坊がつる)
研究者を目指す方へメッセージをお願いします

やはり、自分がどういうスペシャリストになっていくのか、何を目的に研究するのかというところを、しっかり学問的な目標をつくって研究に取り組んでほしいと思っています。博士号という学位を取るのが目的になってしまわないように。目標をしっかり持ったうえで研究に臨んで、研究の面白さを覚えてほしいです。そうすると、臨床に戻ってからも、細々とでも研究を続けられますし、興味や目標があるからこそ継続できますし、その先には患者さんの喜ばれる姿がありますので、とてもやりがいのある仕事です。

久留米大学は地域の『次代』と『人』を創る研究拠点大学を目指しています。今後に向けた意気込みをお願いします。

久留米大学整形外科学講座における私の役割として、自分の専門分野である腫瘍学のみならず、あらゆる分野の発展のため力を尽くしたいと考えています。

学生、若い研究者の教育はもちろんのこと、専門性を持った医師をこの地域に多く配置して、地域全体で専門的な治療が受けられる体制を作るためには、40代の先生方には特に力を入れて指導し、手術の執刀技術と経験値を高めてもらいたいと考えています。次世代の人材育成は、組織の活性化、そして地域医療の発展に繋がると信じています。

経験豊富なスタッフによる高度医療の実践により、福岡県の南を中心に隣接県を含んだ広範なエリアにおいて、充実した地域医療をこれからも継続し、さらに発展させることは久留米大学の大切な役割のひとつです。

当整形外科学教室は30を超える教育関連施設とともに、地域医療を充足させるべく今後も貢献してまいります。

平岡 弘二 教授

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略歴
1988年 久留米大学医学部医学科卒業
1993年 久留米大学大学院医学研究科修了
1993年 久留米大学医学部整形外科学講座助手
1998年 筑後市立病院整形外科 科長
2002年 久留米大学医学部整形外科学講座講師
2003年 Scripps Research Institute (San Diego)へ留学
2011年 久留米大学医学部整形外科学講座准教授
2022年 久留米大学医学部整形外科学講座教授

専門医など

日本整形外科学会専門医
がん治療認定医
運動器リハビリテーション医
骨軟部腫瘍医

研究TOPICS

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