研究・産学官連携の研究TOPICS 【研究者インタビュー】医学部皮膚科学講座 名嘉眞 武國 教授

本学の研究活動は多くの研究者により支えられています。このシリーズでは、研究者を中心に、研究内容やその素顔を紹介していきます。
医学部皮膚科学講座 名嘉眞 武國 教授
所属部署について教えてください
医学部皮膚科学講座の第6代目の主任教授を務めさせていただいております。当講座は1928年(昭和3年)に皮膚泌尿器科学講座として始まり、1954年に当講座と泌尿器科学講座に分かれて独立し、初代主任教授として奥野勇喜教授、占部治邦教授、皆見紀久男教授、笹井陽一郎教授、橋本 隆教授と受け継がれ現在に至ります。
当講座は筑後地区を中心とした福岡県南の地域医療を支え、一般の皮膚疾患の診療に加え多くの専門外来を掲げ充実した診療体制を構築そして実施しております。現在専門外来として乾癬群、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、脱毛症、水疱症、遺伝性皮膚疾患、皮膚悪性腫瘍、皮膚アレルギー、レーザー治療などを設けており、これらの領域を中心に研究も行っています。
特に講座としては歴史的にも各自己免疫性水疱症の詳細な抗原解析を行っており、これまで数多くの自己免疫性水疱症の自己抗原を同定し、その蛋白ないしcDNAから作成したrecombinant蛋白を用いた免疫ブロット法やELISA法などの診断手法を開発してきました。これらの結果は個々の症例における自己抗体の検出や確定診断、治療方針決定のために欠かせないものとなっており、本水疱症に関する検討依頼は全国の多施設からも頻繁にお受けしています。
また遺伝性皮膚疾患に関しては、これまで遺伝性水疱症、魚鱗癬症候群、各掌蹠角化症などの遺伝性角化症の遺伝子変異の同定も多くの症例に対して行ってきました。上記の自己免疫性水疱症と遺伝性皮膚疾患に関しては、多くの英文雑誌に多数掲載されています。
以上より「臨床に繋がる研究で皮膚科診療と患者さんへの有効な治療法を提供することを目指す」をモットーに医局員一同で取り組んでいます。

この道に進むことになったきっかけ、これまでの歩みを教えてください
父親が皮膚科医ではありましたが大学の勤務医でしたので、無理に皮膚科の道に進む必要もないと思い漠然と興味のあった外科か放射線科に進もうと考えていました。ところが大学4年生の時に父親が単身赴任で琉球大学で仕事をしていて、第二の故郷である沖縄に夏休みに行った際強引に1日の仕事に付き合わされました。まず外来ですが、沖縄特有のハンセン病の診断に細かく、かつ詳細に時間をかけて診療している姿、午後には救命センターに同行し、骨折後の欠損部に対する植皮術(1984年)、自宅に戻ればなんと部屋の冷蔵庫の中に多数の真菌培地が入っていて皮膚科学が内科および外科的側面、そして研究と幅広い学問の世界に携わっていることに感銘を受け、結局父親と同じ皮膚科を選択することにしました。
卒業直後に父親に琉球大学の入局を勧められましたが、やはり私自身は違う環境で頑張りたいと思い本大学皮膚科に入局しました。入局後は当時興味があった皮膚悪性腫瘍、皮膚外科学、アレルギー性皮膚疾患そしてダーモスコピーによる診断学に力を注ぎ、好酸球の研究をとおして免疫組織化学的研究、電子顕微鏡および免疫電顕を通しての形態学的研究、それを生かし自己免疫水疱症である水疱性類天疱瘡の新規治療法や発症病態学を学びました。現在は炎症性疾患である掌蹠膿疱症の専門外来を2019年4月に開設すると同時に病態や病診連携について臨床研究を中心とした仕事に従事しています。
研究活動の醍醐味は?
醍醐味は何といっても、夢を持って(期待する結果を巡らせ)未知の結果を求め、自分のある考えが達成できるよう目標を立てて研究を始めると時間を忘れるぐらい没頭できることです。しかし、その目的を目指して頑張っていても現実的には従来の目的が達成できないことは頻繁に経験します。ところが「棚から牡丹餅」ではありませんが、予想もしなかった結果が判明することもあります。そして、どのような結果であろうと、それが関連する疾患の新しい病態や新規治療法に結びついていくことが最も喜べることで、その結果を英語での論文にすると何等か必ず評価され、時には論文賞もいただくこともあると世界的にも少しは役立てたのではないかと思い、秘かに嬉しくなるものです。
研究を離れた休日などにされていることはありますか?
仕事のスピードが遅いので、休日もほとんど大学の部屋に行って業務をこなしていますが、とても静かで落ち着いて集中してできるので仕事が捗ります。ある意味リラックスできることと言えますが、もちろんこれでは気分転換には不十分で、休日の約2時間はジムに行って大量の汗をかいています。ランニングもしますが、筋トレは集中しないと怪我の原因になりますので、鍛えている時は仕事のことを100%忘れメリハリをつけるようにしています。
また海外の映画などを鑑賞するのも好きで、一話約40分の米国ドラマの「スーパーガール」を観ています。主演女優さんがとても綺麗で可愛くストーリーも大変面白い作品です。特に各登場人物がとても個性的でそのような方たちが一つの組織に属し、トップリーダーと所属しているメンバーとの関係に関する内容がとても感動的で、時には涙する事もあります。最近目にした、久留米医師会広報の雑感で、医学部長の矢野博久教授もマイブームとして「スーパーガール」を観ていると書かれていて驚きました。それは、趣味と国際学会での英語のヒアリング対策という実益を兼ねたもので、衰える英語力対策のためであるとあり、まさしく私もそうで同感しました。それからもう一つ、私は小学生の頃から将棋がとても大好きなのですが、何十年も相手してくれる人がいません。どなたか相手してくれる人を探しています。
研究者を目指す方へのメッセージをお願いします
研究することを特別な位置づけと捉えないことです。基礎でも臨床でもその先に自分の研究が必ず関連する疾患に患った患者さんに還元できるものと信じることです。その信念を持って医師として自分を磨き、医師としての仕事に誇りをもって人生を全うしていただきたいと願っています。
久留米大学は地域の『次代』と『人』を創る研究拠点大学を目指しています。今後に向けた意気込みをお願いします。
久留米大学、特に病院は久留米市を中心に多くの開業していた医師達が地域のため大学病院の必要性を強調し、開設を推し進められたという歴史があります。当大学の先輩・同期・後輩の良好な信頼関係があることは他大学の医師達からも聞くことがあり、私自身も実感しております。それは学問のみならず人間形成においても非常に大切であり、これまで、そして今後も熱意のある指導を含めた教育や現場で一緒になり多くの事を実践することで、地域に素晴らしい恩返しと素晴らしい医療を提供ができると信じています。そしてこの思いを維持することで、この地域から世界に羽ばたく人材が育ち、将来この地域に還元されることを熱望いたします。
略歴
1987年 3月 久留米大学医学部医学科卒業
1987年 4月 久留米大学医学部皮膚科学講座入局
1993年12月 大牟田市立総合病院皮膚科部長
1997年11月 久留米大学皮膚科学講座講師
2011年 7月 久留米大学皮膚科学講座准教授
2011年10月 久留米大学医療センター皮膚科准教授および診療科長
2013年11月 久留米大学医療センター皮膚科教授
2015年 3月 久留米大学皮膚科学講座主任教授および診療部長
2017年 4月 久留米大学皮膚細胞研究所所長兼任