研究・産学官連携の研究TOPICS 【研究成果】第5回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会で最優秀賞

第5回日本リハビリテーション医学会(*1)秋季学術集会において、本学医学部医学科整形外科学講座所属の橋田竜騎講師が発表した演題「転倒インシデントとバランス能力評価」が最優秀賞を受賞しました。橋田講師は内村直尚学長や志波直人教授、松瀬博夫准教授、情報システム室江島彰洋氏らの協力のもと、独自の視点で研究を進め今回の受賞に至りました。
研究の概要
ご高齢の患者さんを中心に院内で転倒する例は一定数発生しており、その原因の一つとして薬剤・身体機能の影響があげられています。久留米大学病院では医療安全の取り組みとして、院内の転倒予防を行ってきました。今回、橋田講師と江島氏は転倒に関わる因子を調査した結果を報告しました。他の施設の研究でも薬剤と転倒を調査した研究はありますが、本研究がユニークであった点は睡眠薬や降圧剤などの評価に加えて、患者さんのバランス能力を調査項目として組み込んだ点にあります。その結果、転倒率に影響する睡眠薬別の有意性が確認できたと同時に、患者さんのバランス機能も転倒に影響を及ぼすということが分かり、入院時につぎ足立位ができない患者さんはつぎ足立位ができていない患者さんの約5倍転倒していました(図1)。転倒の原因には”薬剤も重要であるが、患者さんのバランス機能も重要な因子である”ことが確認できました。

将来展望
久留米大学では、理学療法士を各病棟に専従配置することで患者さんのADL(*2)維持向上、転倒予防に取り組んでいます。今後はバランス能力の他に筋力を評価項目に加えて研究を続けることで、より詳細な安全基準の設定や、さらなる院内安全の向上に努めていきます。
用語説明
*1) リハビリテーション医学とは、さまざまな疾患・外傷・病態により生じた機能障害を回復し、残存 した障害を克服しながら人々の「活動を育む」医学です。超高齢社会となった現在、リハビリテー ション医学・医療の範囲は幅広くなっています。小児疾患や切断・骨折・脊髄損傷に加え、脳血管障害、運動器(脊椎・脊髄を含む)疾患、循環器・呼吸器・腎臓・内分泌代謝疾患、神経・筋疾患、リウマチ性疾患、摂食嚥下障害、がん、スポーツ外傷・障害などの疾患や障害が積み重なり、さらに周術期の身体機能障害の予防・回復、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームなども加わり、ほぼ全診療科に関係する疾患、障害、病態が対象となっています。リハビリテーション医学・医療の役割は非常に大きくなってきています。(リハビリテーション医学会HPより)
*2)Activities of Daily Livingの略。移動・排泄・食事・更衣・洗面・入浴といった日常生活動作のことを指し、ADLが低下する背景には身体機能と認知機能の低下と精神面・社会環境の影響があると言われています。
発表
【演題名】「転倒インシデントとバランス能力評価」
【発表者】橋田竜騎
【所属】久留米大学医学部医学科整形外科学講座
https://site2.convention.co.jp/jarma05/