研究・産学官連携の研究TOPICS 【研究者インタビュー】先端癌治療研究センター所長 山田 亮 教授(現名誉教授)

【研究者インタビュー】先端癌治療研究センター所長 山田 亮 教授(現名誉教授)

本学の研究活動は多くの研究者により支えられています。このシリーズでは、研究者を中心に、研究内容やその素顔を紹介していきます。

先端癌治療研究センター所長「がんワクチン分子部門」 山田 亮教授

所属部署について教えてください。

先端癌治療研究センターという長い名称は、単に「がん研究」をするのではなく、「新たながん治療法を開発したい」という強い決意を表しています。センターの「がんワクチン分子部門」に所属しています。

どのような研究を行っているのですか?

「がんワクチン療法」の開発に20数年前から取り組んでいます。
「がん」は生体にとっては異物です。でも長い間、「がん」は免疫細胞から異物として認識されないと信じられていました。ところが、90年代初めにヒトのがん抗原が発見され、異物として免疫に排除されることが明らかになりました。ワクチンで「がんを治療する」という研究のルーツはここにあります。

がん細胞の目印となる「がん抗原ペプチド」は個々の患者さんで異なっています。そこで、個々の患者さんに適した世界でオンリーワンの「テーラーメイドがんペプチドワクチン療法」を開発し、臨床試験を進めています。また、がん細胞の遺伝子変異に対応する「次世代完全個別化ワクチン」の開発にも着手しています。

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研究者になったきっかけから、これまでの研究の歩みを教えてください。

出身は薬学部です。学部学生の時にインターフェロンに出合い、もっと深く知りたくて卒論生として生物薬品(ワクチン等)製造学教室に入り修士課程に進学しました。この時点で研究者になろうという志を持ちました。その後、医学部の大学院に進学し、ひたすら免疫の研究に打ち込んできました。

大学院時代は、百日咳毒素の免疫に対する作用の研究からスタートし、「動物」でアレルギーや感染免疫の基礎的研究を行っていました。久留米大の免疫学講座に助手として着任後は「ヒト」の免疫応答の研究を開始しました。免疫学者として世界で戦っていくには、自分の持っている免疫生物学の知識や技術だけでは不十分であることを痛感し、アメリカのカンサス大学に1年、その後ハーバード大学のダナファーバー癌研究所に1年半留学し、生化学や分子生物学を学んできました。

これまでの研究人生のなかで、特に大きな転機はありましたか?

転機は特にありませんが、学生時代から今日に至るまで多くの師に出会いました。そこから学んだ研究者としての哲学は、「自分にしかできないオリジナルな研究をする」「自分がやらなくても他の研究者によりそのテーマが進歩する研究はしない」の二つです。

研究が進まない時期は、どうやって乗り越えましたか?

壁にぶち当たることはしばしばあります。壁は乗り越えようとするとさらに高くなり、その先に道があるとは限りません。そういう時は、壁を乗り越えようとせず、少し戻って壁の切れ目を探し、壁の先に通ずる道を探すように心がけています。「戻れる確実なポイント」を作っておけば振出しに戻ることはなく、いつでもやり直しができます。

研究以外に大事にしているものはありますか?

NPO法人ウィッグリングジャパンの副代表理事を務めています。脱毛で悩むがん治療中の女性患者さんにウィッグ(かつら)をレンタルする活動をしています。

研究に没頭したときの気分転換や休日にどんなことをされていますか?

研究に没頭したときは、家に帰ってテレビドラマを見たり犬と遊んだりして気分転換しています。休日は家庭菜園を耕したり、道の駅や温泉巡りをしています。たまに蕎麦打ちもします。

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研究をとおして、社会、人にどのような成果をもたらしたいと思いますか?

一日も早く患者さんのもとに新たながん治療法を届けられるように実用化を常に意識しながら研究を行っています。

研究者を目指す方へメッセージをお願いします。

独自性の高い研究をすること。もう一点は、国民の税金を使って研究をさせていただいているので、将来何らかの形で社会に還元できるよう常に意識しながら研究することでしょうか。そうすればおのずと質の高い価値ある研究成果が得られると思います。

久留米大学が「地域の『次代』と『人』を創る研究拠点大学」を目指すことについて。

がん治療は急速な発展を遂げ、がんは今や治る病気になりつつあります。でも、がん治療中の方やがん経験者にとってはまだまだ厳しい世の中です。「がんになっても安心して生きていける社会」、そんな「次代」とそれを支える「人」をともに創りましょう。

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略歴
1986年 九州大学大学院博士課程修了
1986年 久留米大学医学部免疫学講座助手
(1995年講師,1999年助教授)
1987年 米国Kansas大学留学
1988年 米国Harverd大学Dana-Faber癌研究所留学
2003年 久留米大学先端癌治療研究センター教授
2009~2013年 同センター所長
2013年 久留米大学先端癌治療研究センターがんワクチン分子部門部門長
2016年 久留米大学先端癌治療研究センター所長

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