研究・産学官連携の研究TOPICS 医学科と医療検査学科による多職種連携教育

医学科と医療検査学科による多職種連携教育

今年度は「ワンヘルス」をテーマに合同発展学習を実施

「協同学習」は、医師に求められるチーム医療に資する人間性(協同の精神)と、科学的探究力およびコミュニケーション能力を体得し、仲間と切磋琢磨し共に高め合うことを目的とした、医学部医学科1年生の必修科目です。

本学では、全国の医科大学に先駆けてこの「協同学習」を導入しており、その教育手法は日本医学教育評価機構(JACME)からも高い評価を得ています。昨年度新設された医療検査学科でも、「学びの基本Ⅰ」の中でこの学びを取り入れており、学生たちが主体的に考え行動する力を育む取り組みが進んでいます。

このたび、両学科1年生による合同授業が実施され、多職種連携教育の一環として「ワンヘルス」をテーマとした発展学習ポスター発表が行われました。

グループごとにまとめたポスターをもとに発表を行う学生たち
グループごとにまとめたポスターをもとに発表を行う学生たち
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発表内容に対して、学生間で活発な質疑応答が交わされました
発表内容に対して、学生間で活発な質疑応答が交わされました
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「ワンヘルス」とは、人・動物・環境の健康が相互につながっているという考えに基づいた、新たな国際的アプローチであり、福岡県でも積極的に推進されているテーマです。

今回の発展学習では、両学科の学生が混成グループを組み、それぞれが事前に調べた情報や考察をもとに、グループで議論を重ねてポスターを作成。発表では、感染症、食品安全、環境問題、動物と人間の共通疾患など、ワンヘルスの観点から多様な切り口で課題と提案をまとめました。

疾患モデル研究センター、塩澤誠司教授
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疾患モデル研究センターの塩澤誠司先生によるレクチャーでは、人・動物・環境を相互に結び付けて捉える「ワンヘルス」の視点が、感染症対策や日本人の動物観を交えながら語られました。筑後川流域でかつて猛威を振るった日本住血吸虫症を克服した事例は、久留米大学の研究者が中心的な役割を果たし、地域の医師や行政、住民が一丸となった総合的な取り組みであり、世界で唯一となる住血吸虫症の根絶を達成できたことが紹介されました。さらに、駆除した巻貝「ミヤイリガイ」をも供養されているのは、ワンヘルス的価値観が文化的背景としてあるのだろうと考察されました。塩澤先生は「日本にはワンヘルスの精神がすでに深く根付いている。これをいかに実践に結び付けるかが、これからの課題」と締めくくりました。

さらに、学生と教員による投票をもとにした表彰式が行われ、優れたポスター発表を行ったグループが表彰されました。

参加学生からは「動物由来感染症について、これまであまり意識していなかったが、人間社会と深くつながっていることが分かった」「ポスター作成を通して、医療職に必要なチームでの情報共有や視点の統合が体験できた」といった感想が聞かれました。

表彰式の様子
表彰式の様子
最優秀賞に選ばれたグループ代表
最優秀賞に選ばれたグループ代表

医療現場では、チームとしての協働が不可欠です。「協同学習」および「学びの基本Ⅰ」では、知識や技能のみならず、人との信頼関係を築き、協同して学び合う力を育むことを重視しています。学科を越えて共に学ぶ経験は、学生たちにとって、将来の医療人としての在り方を考える貴重な機会となりました。

研究TOPICS

TOPICS:医学科と医療検査学科による多職種連携教育