研究・産学官連携の研究TOPICS 環境にも優しい鰻用育成促進サプリを開発

本学分子生命科学研究所の齋藤成昭教授は、帝京大学理工学部総合理工学科の高山優子准教授らとの共同研究により、従来成長促進として使われている魚油に代わる油脂生産酵母から作られる「ウナギ用サプリメント」を開発しました。本サプリメントをウナギの餌に混ぜて与えることで、ウナギの体重と胴回りの成長が早くなります。このサプリメントが実用化すると、脂ののったおいしいウナギがお財布にやさしい価格で食べられるようになると期待されます。
本研究成果は、2025年9月12日(金)「月刊 BIO INDUSTRY」に掲載されました。
研究の概要
土用の丑の日に鰻を食すように、多くの人が鰻料理を愛しています。これまでも日本はウナギの生産研究に力を入れており、人工授精技術や孵化など大きな成果をあげています。現在流通しているウナギの多くはシラスウナギを採取して養殖していますが、シラスウナギの捕獲量は年々減少しており価格がどんどん上昇しています。また、ウナギの餌には魚油を添加していますが、水中で分離し水質を悪化させる問題があります。そこで本研究グループはウナギ生産現場で聞かれる魚油の問題点を酵母研究者の立場から解決できないかと考え、研究を進めました。
魚粉を主原料とするウナギの餌には、成長を促進するために魚油が練りこまれています。魚油は魚の肝臓から取れる油ですが、近年の漁獲高の減少にともなってその価格が高騰しています。また、餌に練りこまれた魚油が水中で分離してしまい、分離した魚油によって水質が悪化するため水の入れ替えをするなど、光熱費がかかります。そこで本研究グループは、魚油の代わりに「油脂生産酵母」を利用することにしました。土壌から採取される油脂生産酵母は、中性脂肪(トリアシルグリセロール)からできた大きな油滴を自身の細胞内に貯め込むといったユニークな性質を持っています。
この油滴は細胞内に閉じ込められているため、餌から分離して水を汚すことがありません。油脂以外にもビタミン類やミネラルなどの栄養素が酵母には含まれています。油脂を貯め込んだ酵母をサプリメントとして餌に混ぜてウナギに食べさせると、体重と胴回りが早く大きくなりました。
体重増加を比較すると、油脂を貯めた酵母(サプリ酵母)を食べたウナギは、油脂を貯めていない酵母を食べたウナギのおよそ2倍の速さで成長することが明らかになりました。
油脂生産酵母を使用したサプリ酵母をウナギに食べさせることで早く大きく成長し、より早く身の厚いウナギを出荷できるようになります。育成にかかる時間が短縮され、必要な餌代や飼育費用が抑えられることから、お財布にやさしくておいしいウナギが提供できることが期待されます。
発表論文
本研究は、JST A-STEP育成型(JPMJTR23U3)及び、科研費(基盤研究C 23K05152、25K09482)の助成により行われました。
・タイトル:ウナギ餌用サプリメントの開発
・著者:高山優子、平澤孝枝、齋藤成昭
・URL(月刊 BIO INDUSTRY):https://www.cmcbooks.co.jp/products/detail.php?product_id=116010