研究・産学官連携の研究TOPICS 【研究者インタビュー】医学部法医学講座 二宮 賢司 教授

【研究者インタビュー】医学部法医学講座 二宮 賢司 教授

社会へ還元する死因究明。一歩一歩の積み重ねが、誰かの未来を守る

本学の研究活動は多くの研究者により支えられています。このシリーズでは、研究者を中心に、研究内容やその素顔を紹介していきます。

法医学講座について教えてください

法医学講座は、学内外で法医実務、研究、そして教育を担う講座です。法医学と聞くと、多くの方が「司法解剖」をイメージされるかと思いますが、それだけではありません。事件性のない死因究明のための解剖や、身体的虐待や傷害事件において怪我の成り立ちを推定する「生体鑑定」という分野も含まれます。これらの業務を通して社会貢献することが大きな目標であり、亡くなられた方、生きている方のいずれを通してにせよ、結局は生きている方々の権利や安全を守る役割を果たしているわけです。


幼少期から医師を志すまで

私は宮崎で生まれ、福岡で育ちました。子どもの頃は自由にぼんやり過ごしていましたが、「大人になったら自然科学系の研究をするものだ」となんとなく思っていましたね。
にもかかわらず、高校時代は文系を選んだのですが、高3の秋に突然「医学部に行こう」と思い立ちました。
父親が医師だったので、漠然と医師という職業は意識していましたが、深く考えすぎず、直感で選んだ部分も大きかったと思います。ぼんやりと研究への興味があり、直接社会の役に立てる仕事に魅力を感じていたのだと思います。そして、1年浪人して琉球大学医学部へ進学しました。


形態学への興味と「第三者」としての適性。法医学との出合い

入学当初は父が進んだ精神科を意識していました。法医学の道に進む転機となったのは、琉球大学時代の恩師である宮崎哲次教授の講義です。先生の講義はお話が面白くてそれも楽しかったですし、また法医学の講義は写真を見ることが多いんです。私はどうも「形態学」が好きなようで、目で見てわかるものが楽しかったですね。時間をかけてじっくり考えるスタイルが自分の性に合っていると感じたことも法医学に進んだ理由の一つです。

また、法医学は感情移入しすぎず「客観的な第三者」として臨むことが何より求められます。裁判や捜査協力において中立の立場を貫くことが信頼に繋がります。目の前の事例にあまり感情移入せず、他人事として見られるという私の性格も、この分野に向いていたのだと思います。


避けられた死を防ぐために。社会へ還元する法医学の役割

大学院では「局所陰圧損傷」の研究を行いました。これは、例えば「強力な掃除機で腕を吸われたらどうなるのか」といった現象を解明するものです。実際の事故をきっかけに始まった研究ですが、法医学で扱うケースには、本来であれば避けられたはずの死も多く含まれます。死因や状況を詳細に解剖で解き明かし、事故の再発防止や社会への提言につなげていくことこそが、法医学の重要な任務だと考えています。 

また現在は、日常業務の簡便・迅速化に関心があり、例えば皮下出血などから事故や事件の発生時期を突き止める「受傷時期推定」などの、日常業務で用いる検査法をより簡便・迅速に行えないか考えています。


学会発表の様子
学会発表の様子
解剖棟にて
解剖棟にて

ユニークな「ニホンザルの死因究明」

実は、人間の死因究明だけでなく、「実験動物の死因究明」にも取り組んでいます。ちょっとした縁があって、他施設と共同で、予定外に死亡したニホンザルの解剖と死因究明を行っています。これは動物福祉や動物実験のより良いあり方のための基礎的な研究と言えます。本来の仕事ではないといえばないですが、やってみるとなかなか面白く、良い気分転換にもなっています。


休日やリフレッシュの方法はありますか?

自転車通勤とボルダリングは沖縄にいた頃から続けています。久留米は道が平坦で自転車が非常に楽なのですが、走行距離が短くなってしまい、少し運動不足を心配しているところです(笑)。

読書も好きで、特に科学的考証がしっかりしたハードSFを寝る前などに読みます。理屈に沿って展開する物語が好きですね。

仕事で行き詰まった時は「さっさと寝る」「何も考えずに手を動かす」のが一番です。法医実務は「警察から要請が来たら動く」という側面が強く、向こうからやってきた課題を淡々とこなしていくうちに道が開けていくことも多いと感じています。


家族で過ごす沖縄での休日
家族で過ごす沖縄での休日
共同研究で行っているサルの解剖の様子
共同研究で行っているサルの解剖の様子

若い研究者や学生へのメッセージ

若い頃に集中して多くの解剖を経験したことは、自分の糧になりました。体を壊したら元も子もありませんが、若いうちにちょっと無理をして頑張ってみる時期があるのも悪くない選択です。

ある程度の計画を立てて、目の前のことをきちんとこなしていれば、気づけば案外遠くまで行けるものだと思います。無理をしすぎず、一歩ずつ頑張ってください。

 

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略歴

2008年3月 琉球大学医学部 卒業
2012年3月 琉球大学大学院医学研究科博士課程 修了
2012年4月 琉球大学大学院医学研究科法医学講座 特命助教
2015年4月 同 助教
2018年4月 同 教授
2026年4月 久留米大学医学部法医学講座 教授

日本法医学会評議員
日本法医学会認定医

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