研究・産学官連携の研究TOPICS リアルタイム超音波ガイドで胸部硬膜外穿刺の初回成功率が向上

リアルタイム超音波ガイドで胸部硬膜外穿刺の初回成功率が向上

地域病院で行った臨床研究が、麻酔科学分野の主要国際誌『Anaesthesia』にEditorial付きの原著論文として掲載

本学医学部麻酔学講座(助教:上瀧正三郎)と大牟田市立病院麻酔科の研究グループは、腹部手術を受ける患者さん64名を対象に、胸部硬膜外穿刺における2つの超音波ガイド法を比較するランダム化比較試験を行いました。

比較したのは、針の進む様子を超音波で確認しながら穿刺する「リアルタイム超音波ガイド法」と、穿刺前に超音波で位置を確認する「手技前超音波法」です。

その結果、皮膚への穿刺が1回で、針の方向を大きく変えることなくカテーテルを留置できた割合(初回成功率)は、リアルタイム法で81%、手技前超音波法で47%でした。リアルタイム法では、針を進め直す回数と皮膚への穿刺回数も少なくなりました。

本研究成果は、麻酔科学分野の主要な国際誌の一つである『Anaesthesia』(Impact Factor 2025:7.4)に、2026年9月1日付でオンライン掲載されました。同誌には、本研究を取り上げたEditorial(論説)も掲載されています。

 

■ 研究の背景

胸部硬膜外麻酔は、腹部手術後の痛みを和らげるために広く用いられています。一方、下部胸椎での硬膜外穿刺は難しく、針の方向を変えたり、皮膚を再度穿刺したりすることがあります。

近年、硬膜外穿刺に超音波を用いる方法が注目されていますが、穿刺の難しい下部胸椎において、リアルタイム法と手技前超音波法を直接比較した研究は限られていました。また、従来のリアルタイム法では、穿刺の全過程を連続して超音波で確認することが難しい点も課題でした。

■ 研究の特徴と成果

本研究では、硬膜外腔に到達すると押し子が自動的に進む定圧式シリンジを使用しました。これにより、術者は超音波プローブと針を保持したまま手技を続けることができます。リアルタイム法を受けた32名のうち28名(88%)では、皮膚穿刺から硬膜外腔への到達まで、連続して超音波画像を確認できました。

初回成功率は、リアルタイム法で81%(26/32名)、手技前超音波法で47%(15/32名)であり、リアルタイム法で有意に高い結果となりました。手技にかかる時間には、明らかな差は認められませんでした。

Editorialでは、本研究の内容と結果が評価され、超音波の活用が胸部硬膜外穿刺の手技成績を改善する可能性が論じられています。一方、本研究は単施設で、比較的BMIの低い日本人患者を対象に、熟練した術者が手技を行ったことから、今後は異なる施設、術者、体格の患者を対象とした検証が必要です。

■ 今後の展望

今後は、手技の成功だけでなく、術後の痛みや回復の質など、患者さんにとって重要な効果についても検証を進めます。

研究グループは、臨床現場の課題に即した研究を通じて、より負担の少ない周術期医療の実現を目指します。

■ 論文情報

タイトル: Real-time vs. pre-procedural ultrasound guidance for lower thoracic epidural puncture: a randomised controlled trial

掲載誌: Anaesthesia(Impact Factor: 7.4)

著者: Shosaburo Jotaki, Naoki Maesako, Kenta Murotani, Moeto Uchimura, Teruyuki Hiraki (上瀧正三郎、前迫直樹、室谷健太、内村萌人、平木照之)

公開日: 2026年9月1日(オンライン公開)

DOI: https://doi.org/10.1111/anae.70361

上瀧助教コメント

地域病院で行った臨床研究の成果を、麻酔科学分野の主要な国際誌に発表できたことを大変嬉しく思います。これまで研究が限られていた下部胸椎での硬膜外穿刺を対象とし、穿刺開始から硬膜外腔に到達するまで、連続して超音波で確認する方法の実施可能性を示したことが、本研究の特徴です。

今後は、術後の回復の質など、患者さんにとって重要な効果についても検証し、患者さんの視点を大切にしながら診療と研究を続けてまいります。

研究にご協力いただいた患者さん、大牟田市立病院の麻酔科、外科、手術室、倫理委員会の皆様、ならびに久留米大学医学部麻酔学講座とバイオ統計センターの先生方に、心より感謝申し上げます。

大牟田市立病院の研究チーム(前列右側:上瀧 助教)
大牟田市立病院の研究チーム(前列右側:上瀧 助教)

研究TOPICS

TOPICS:リアルタイム超音波ガイドで胸部硬膜外穿刺の初回成功率が向上