研究・産学官連携の研究TOPICS 小原講師が日本医療マネジメント学会 学会賞を受賞【バイオ統計センター】

小原講師が日本医療マネジメント学会 学会賞を受賞【バイオ統計センター】

バイオ統計センターの小原 仁 講師が、日本医療マネジメント学会にて学会賞を受賞しました。

日本医療マネジメント学会は、医療マネジメント手法の開発と普及をはかり、医療の質の向上に寄与することを目的に1999年に設立されました。会員数は8000人弱で、臨床現場の医師やコメディカルスタッフなどの医療従事者が多くを占めています。本学会の学会賞は、その年における最も優秀な論文と認められ、かつ医療マネジメントの進歩に貢献した者に与えられる賞です。 

論文名:「がん登録症例を識別する予測モデルを用いた症例検索業務の効率化に関する定量分析」

小原 仁 講師(バイオ統計センター、久留米大学病院臨床研究センター先端的バイオメディカル情報解析部門所属)

研究の概要と成果

本論文のタイトルは「がん登録症例を識別する予測モデルを用いた症例検索業務の効率化に関する定量分析」です。これは2016年に法制化された日本でがんと診断とされた全ての症例を国に届け出る仕組みである全国がん登録事業の症例検索業務をテーマにしたものです。

がん登録の届出義務のある施設は、国内にある全ての病院が対象です。がん登録の届出の実務を担う病院では、多くの外来患者や入院患者のなかから一つ一つ症例を選別し、登録症例を見つけ出しています。こうした症例検索業務の負担軽減は、病院の実務者の大きな課題となっていました。そこで小原講師らは、病院の医事会計データに含まれている病名データとレセプトデータをもとに作成した登録症例を識別する予測統計モデルを用いて、症例検索業務の負担軽減効果を評価しました。

その結果、本モデルを用いた症例検索法は、症例検索の対象となる全症例数の約2割から5割を軽減できることが分かりました。本研究成果は、医事会計データを有している全ての病院で検討することができることから、多くの施設での利用を期待することができます。しかし一方で、がんの診断や治療を担う病院の施設類型はさまざまですので、すべての施設類型に同様の成果を期待できるかという点については今後の課題になります。

小原講師のコメント

医療機関には医事会計データだけでなく、電子カルテデータやオーダリングデータなど様々な医療データが膨大に蓄積されています。こうしたデータは保管しているだけでは保管コストが発生しますが、活用すれば付加価値を生み出す資産になります。日々蓄積され続けている膨大な医療データから付加価値を生み出す利活用法の研究は、今後も私の主たる研究テーマです。一方で、医療データを利活用できる人財の育成にも関心があります。本学では医師や看護師、臨床検査技師などの養成も行っており、私は特に臨床検査技師を目指す学生の講義に携わっています。そこで具体的には、医療データを扱える専門的な知識と技能を有する新しいタイプの臨床検査技師の養成に貢献できればと考えています。近い将来、医療データを主体的に利活用できる臨床検査技師が医療現場で活躍することで、多くの病院の医療の質や経営の質はもっともっと良くなるのではないかと期待しています。

授賞式の様子
授賞式の様子

>久留米大学医学部附属臨床検査専門学校のHPはこちら

>小原講師の所属する久留米大学バイオ統計センターのHPはこちら

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