学生生活・就職のTOPICS 【文化経済学科】300年の伝統行事「虫追い祭り」の維持・継承のための地域連携、史上初の学生参加
2025年11月22日、久留米市田主丸町で、江戸時代から300年以上の歴史を持つ伝統行事「虫追い祭り(むしおいまつり)」が開催されました。久留米市の「筑後川遺産」にも登録されています。
この祭りは、3年に一度、11月中旬に開催され、五穀豊穣を願う「虫追い」本来の目的に加え、高さ約3メートルの武将人形と大馬が激しくぶつかり合戦を演じる、全国的にも珍しい唯一無二の勇壮な「喧嘩祭り」です。
かつては全国各地で行われていた「虫追い」の行事ですが、継続できていない地域も多くあります。田主丸町でも戦後しばらく途絶えていましたが、1977年に、この伝統を絶やしたくないという思いをもったJAにじ田主丸地区青年部が中心となって祭りを復活させました。
全国的に人手不足や高齢化により伝統行事の存続が危ぶまれる中、経済学部文化経済学科の藤谷岳研究室の学生たちが、祭りの「担い手」としてだけでなく、『伝統文化を地域社会のなかで維持していくことの意義と課題を考える』という学術的な使命も持って祭りに関与し、新たな地域連携モデルを築きました。
300年の伝統、田主丸「虫追い祭り」
この祭りの起源は、「平家物語」の篠原合戦に登場する斉藤別当実盛と手塚太郎光盛が武将人形になっていて、実盛は、乗馬している馬が稲株につまずき転んだところを光盛に討ち取られたため、死んだ実盛が害虫に化けて稲を食べる、という言い伝えとされていて、実盛の武将人形も「さねもりむし」と呼ばれています。
「虫追い」の本来の目的は、村民総出でたいまつの行列を組んで田をまわり、松明(たいまつ)に集まる害虫を焼き払うことでした。その行列に実盛や馬の藁人形を登場させる地域もありましたが、田主丸ではそれが人形芝居のような形に発展したようです。
1体の人形を竹で支え、6人の担ぎ手が協力して、人形浄瑠璃のように手足を動かして踊らせます。鐘と太鼓が乱打される中、支えの竹が折れるほどの勢いで2体の人形がぶつかり合います。人形が絡み合ったまま倒れると、そこに実盛の大馬が走り抜けます。
虫追い祭りと藤谷研究室
祭りの準備は、10月から始まり、人形は毎回新たに作られます。大馬は農協が行事を復活させた1977年からの物を修繕して使います。11月に入ると、早朝練習で人形・馬の重量と操り方を体に沁み込ませます。
藤谷研究室では、『伝統文化を地域社会のなかで維持していくことの意義と課題』について、地域の方と共に考えていく活動に数年前から取り組んでいます。
その活動の一環として、今回の「虫追い祭り」に何らかの関わりをもちたいということを田主丸地域の伝統行事を伝える活動をされている黒田俊光氏(元・久留米市地域おこし協力隊)に相談し、祭りの主催者であるJAにじ田主丸地区青年部の中心メンバーを紹介していただいたことがきっかけとなりました。
これまでは、JA青年部が、青年部OBとJAにじ職員の加勢を受けて、自分たちだけで実施してきましたが、青年部も人数が減少していることもあり、今後の行事のあり方を検討しないといけない時期にきていたようです。
大学との連携・協力について相談したところ、主催者側からは、学生たちが、準備・練習から本番まで、一体感をもって取り組むことを条件に、藤谷研究室側からは、ただの「⼈⼿」ではなく、「祭りの維持のための仕組みづくりを考えていくための研究活動」に協力いただけることを条件に、今回はじめて、JA青年部と学生たちが一緒に取り組むことになりました。
「虫追い祭り」は、わらや竹で作られた高さ約3メートルの武者人形や大馬が激しくぶつかり合います。その激しさゆえ、人形や大馬を操るには事前の集中的な練習が不可欠です。今回は、約120人の参加者の中に学生も加わり、本番に向けて精力的に活動しました。
学生たちは、本番の2週間ほど前から、平日午前6時からの早朝練習に合流。人形や馬の重量と操り方を体に沁み込ませるため、熱心に汗を流しました。
また、今回、女子学生が5名、鉦と太鼓で参加しましたが、この祭りに女性が参加することも、史上初でした。呼吸を合わせて鳴らすのは難しいので、朝練で練習を重ねました。
【YouTubeチャンネル「語る、田主丸」】
黒田俊光氏(元・久留米市地域おこし協力隊)
祭りの本番と地域との交流
祭りの当日は、朝7時半に100人以上の担い手が田主丸天満宮に集まり出陣式を行い、そこから一日かけて保育所や田主丸中心街など町内の各所で祭りを披露します。
昼の部では、人形は、鉦・太鼓のお囃子に合わせ町内を練り歩きながら、各所で合戦も行います。さらに多くの人々が待っていた「月読神社」、「にじの耳納の里(吉井町)」でも披露され、夜の部は、暗くなった巨瀬川の中で松明を灯しながら、川合戦を繰り広げました。観光客などからは、その迫力に驚きの表情と歓声が上がっていました。
祭りの全日程を終えた後、藤谷准教授が祭りの担い手たちから胴上げされる場面もありました。この胴上げは、単に研究室の参加が歓迎されただけでなく、藤谷准教授自身が地域の伝統継承という使命に真摯に向き合い、学生と共に準備から本番まで深く関わったことに対する、地域住民からの感謝と歓迎の証です。
「虫追い祭り」を未来永劫に
≪参加した学生代表≫
「練習から参加させていただいて、地域の一体感や思いやりの気持ちなどに魅力を感じた。この伝統行事を続けていくことでこの行事が地域の交流の場となり、地域を盛り上げていくきっかけや情報交換などができる場所になっていると感じた」過酷な練習と本番を経て、伝統文化に直接触れる喜びを語ってくれました。
また、祭りを見学した学生からは、「地域の人たちが自然に集まってつながりを感じられるところに魅力を覚えました。普段はあまり関わりのない世代同士が協力したり、昔から受け継がれてきたやり方を教え合ったりする様子を見て、地域の温かさを強く感じました。また、長い間続いてきた行事だからこそ、その土地の歴史や価値観がしっかりと残っていることにも惹かれました」と話しました。
≪藤谷准教授の総括≫
藤谷岳准教授は、「学生たちとともに準備・朝練・本番まで参加して、JA青年部と学生たちが自然と溶け込んで、真剣に、かつ、楽しみながら、一つの伝統行事を作り上げる姿に、涙が出るくらい感動しました。青年部のみなさんからは、大学生が関わることで、「楽しかった」「盛り上がった」という声だけでなく、「今までより真剣になれた」「引き締まった」という感想もいただきました。今回、学生たちは、祭りに参加しただけでなく、担い手と見物客の両方にアンケート調査を実施しています。自分たちの実践の経験と、アンケートで集めたデータなどを用いて、虫追い祭りが有する価値と、その保全・継承についての検証・考察を進め、地域に還元してまいります」と締めくくりました。
今回、久留米大学の学生が積極的に参加したことで、地域の伝統を絶やすことなく次世代へ引き継ぐための新たなモデルケースが生まれました。
今後も、3年ごとの開催を通じて、地域と大学が連携し、この勇壮でユニークな「虫追い祭り」が未来永劫にわたって田主丸で繰り広げられることが期待されます。
300年以上続く、全国唯一の祭りを絶やすことなく次世代へ引き継ぐ努力と工夫が今後も続きます。
■JAにじ
■久留米市「田主丸・虫追い祭り覚書」-全国唯一の伝統行事の歩み-
■クロスロードふくおか(福岡県)田主丸・虫追い祭り