学部・大学院のTOPICS 「次世代の九州がんプロ養成プラン」特別セミナーで切らずに治す乳癌治療の今に触れる講演会

11月13日、久留米大学大学院医学研究科・久留米医師会の主催で「次世代の九州がんプロ養成プラン」を推進する一環として、「乳癌専門医が語る手術に代わる乳癌の新しい治療法」と題した特別セミナーが旭町キャンパスの筑水会館で開催されました。
「次世代の九州がんプロ養成プラン」は、がん医療の現場で顕在化する課題解決、がん予防の推進、新たな治療法の開発などを目的として、九州・沖縄の11大学が共同で推進する新プログラムで、現場の課題に即した教育と実践を通じて、がん医療の未来に貢献する専門家の育成がなされています。
今回のセミナーでは、「乳癌」の治療法における手術に代わる最新のアプローチについて、最前線で活躍する専門家を講師に、多様ながん治療の可能性を考える貴重な機会となりました。


「早期乳癌における非切除陽子線治療の現状」講師:久留米大学放射線治療センター長 淡河 恵津世 教授
久留米大学病院 放射線腫瘍センター長の淡河教授が、乳癌に対する最新の放射線治療について解説しました。淡河教授は、佐賀県鳥栖市にある重粒子線治療※施設「SAGA HIMAT」の運営に関わっている公益財団法人 佐賀国際重粒子線がん治療財団の理事も務めています。
講演では、放射線治療センターが外科学講座(乳腺・内分泌外科)と取り組んでいる、手術せずに陽子線治療だけで乳がんを治療する臨床試験の実績について紹介しました。陽子線治療は、陽子(プロトン)という比較的軽い粒子をピンポイントに癌細胞に照射し、正常組織へのダメージを抑えつつ、がん細胞を破壊する治療法です。陽子線は腫瘍のみにエネルギーを集中させやすいという特徴があり、正常な組織が多く含まれる部位の治療に効果を発揮するものです。乳がんの非切除療法としての臨床的有効性に関するデータや、患者満足度なども紹介されました。
※重粒子線治療:がん細胞へのダメージが大きいとされる重粒子線を高精度でがん細胞に照射する治療法


「乳癌のラジオ波焼灼療法(RFA)の現状」 講師:国立病院機構東京医療センター 乳腺外科 副院長 木下 貴之先生
東京医療センター乳腺外科で副院長を務める木下貴之先生が、切らない乳癌治療として「ラジオ波焼却療法(RFA)」の治療方法を動画を交え分かりやすく解説し、その治療実績について紹介されました。ラジオ波焼却療法は、体にメスを入れず、がん細胞に高周波エネルギーを照射するための「電極針」を用いてラジオ波で焼却する新しい治療法で、2024年に保険適用となり今後普及が期待される治療法です。体に負担の少ない治療法として、患者のQOL(生活の質)向上などから、今後のがん治療における重要な選択肢として期待が寄せられています。木下先生が国立がん研究センター時代にリーダーを務めた多施設共同研究により、その治療効果が確認されて保険適用となり、切らない治療法として注目されています。
今回の座長を務めた、唐 宇飛教授の所属する医学部外科学講座(乳腺・内分泌外科)でも大学病院の新たな乳腺治療として導入され、九州で本治療のできる数少ない施設の一つとして実績を重ねています。


両講演ともに講演後には、新たな治療方法についての知見を深めた参加者から熱心な質問が寄せられました。最後に主催者の久留米医師会を代表して、田山メディカルクリニック田山 光介院長が閉会の挨拶をし、本セミナーを総括しました。
今後も本学は、「次世代の九州がんプロ養成プラン」を通じたがんの専門家の育成のみならず、大学病院、医療センターを中心とする地域に根ざした医療活動を推進し、九州の医療水準向上に寄与すべく、さまざまな取り組みを進めてまいります。


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