研究・産学官連携の研究TOPICS 先端癌治療研究センター市民公開講座「硬い肝ぞう、危ないぞう」を開催
2023年7月1日、久留米大学先端癌治療研究センター主催の市民公開講座「硬い肝ぞう、危ないぞう」を医学部筑水会館で開催しました。
近年、糖尿病や肥満などの代謝異常を背景とした慢性肝障害が、肝硬変や肝がんに進展する可能性を高めることが明らかになっています。
この市民公開講座では、知らないうちに進行する肝硬変や肝がんの隠れた症状や危険性について、皆さまに知っていただくことを目的としました。
肝硬変治療の専門医師や病理医等から、多面的な視点で興味深い話がなされました。

講演内容
1.『肝硬変って?原因や症状などの基礎を知ろう!』
中村 徹 准教授(医学部内科学講座消化器内科部門)
肝硬変とはどんなものか、その原因や症状などを分かりやすく解説、今日においてはウイルス性によるものは半分程度に減少したものの、アルコール性によるものや生活習慣(肥満等)に起因するものが年々増加傾向にあること等、原因が変化している現状について説明されたほか、中村准教授が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実用化研究事業として取り組んでいる肝硬変に対する再生医療の研究成果などについても紹介しました。


2.『顕微鏡で見る肝臓の世界』
近藤 礼一郎 講師(医学部病理学講座)
病理医である近藤講師から、500以上の仕事をこなす人間最大の臓器である肝臓を病理というミクロの世界から紹介、肝硬変になることで慢性的な細胞の傷害がDNAの損傷につながり、がんになる可能性があること、肝臓がんの種類とそれぞれに対応した治療法などについて解説しました。


3.『危ない肝ぞうと肝がん』
古賀 浩徳 教授(久留米大学先端癌治療研究センター所長、医学部内科学講座消化器内科部門)
先端癌治療研究センター所長の古賀教授から、最近はC型肝炎などではなく、糖尿病や アルコールが原因の非ウイルス性の肝がんが増えており、切除できないような大型の肝がんも増えてきていること、がんをピンポイントで狙う分子標的治療薬の進歩により、広がりを持った肝がんに対して全身治療する免疫療法と合わせることで、効果的な治療が行われるようになってきた「肝がん治療の今」について解説しました。



また、今年6月奈良県で開催された第59回日本肝臓学会総会での奈良宣言2023が紹介され、一般的な健康診断における血液検査で広く測定されているALT(GPT)値が30を超える場合は、かかりつけ医を受診してほしいと早期発見、早期治療について勧められました。
「すこやかな『次代』と『人』を創る研究拠点大学」を目指す本学では、今後も教育・研究のさらなる質の向上に取り組み、地域の皆さまのすこやかな健康づくりに役立ててまいります。
