地域貢献のTOPICS 御井図書館「古賀邦雄河川文庫」開設記念講演会を開催しました

御井図書館「古賀邦雄河川文庫」開設記念講演会を開催しました

本学に「古賀邦雄河川文庫」が開設されて2年を迎えます。それを記念して11月27日、水文学の権威で世界の水資源の持続可能性について研究されている東京大学教授の沖 大幹氏をお招きし、「いま、地球で何が起きているのか?異常気象と気候変動の関係」と題した講演会(久留米大学比較文化研究所筑後川流域圏研究部会主催)を行いました。

この古賀邦雄河川文庫は、久留米市在住の古賀邦雄さんが30年以上にわたり水・河川・湖沼に関する約1万2千冊の蔵書を本学に寄贈されたことを受け、御井図書館に開設されたものです。蔵書には、全国の大学図書館や国立国会図書館にない貴重な資料も多く、たくさんの方にご利用いただいています。 

講演会に登壇いただいた沖教授は気象予報士でもあり、2016年10月より21年9月まで国際連合大学上級副学長、国際連合事務次長補佐を務められ、地球規模の水文学および世界の水資源の持続可能性を研究されています。気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)第5 次報告書統括執筆責任者、国土審議会委員などを歴任され、水文学部門で日本人初のアメリカ地球物理学連合(AGU)フェロー(2014年)にもなられました。

講演では、まさに「いま、地球で何が起きているのか」を、大気中の二酸化炭素濃度の推移、その影響による世界平均の気温と海面水位の変化、気候変動に伴う自然災害の状況の変化などについて分かりやすく解説いただきました。

講演される沖教授
講演される沖教授

また、世界は「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことなどを目指した2015年11月のパリ協定下にあるものの、このまま二酸化炭素濃度の上昇、温暖化が推移すれば、最悪のシナリオ(※沖教授が関わられた国連気候変動に関する政府パネル(IPCC)第5次評価報告書の代表濃度経路シナリオのRCP(Representative Concentration Pathways)8.5という温室効果ガスの最大排出量のシナリオ)では、その影響で、2070年には全人口の23.3%にあたる17億人が未曾有の気候リスクにさらされる、といった将来予測などが示されました。

そうならないためにも、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギー導入、EVシフトといった「緩和策」、気候変動への影響への対策や農作物の品種改良、防災対策といった「適応策」両方の側面で、世界的な対応が必要であり、中でも途上国の温室効果ガス排出を増大させないエネルギー充実の実現の支援が重要であること、また新たなエネルギーシステムなどカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる)につながる技術革新などにも期待せざるを得ない現状などが伝えられ、「30年あれば世の中は変わる・変えられる」、「水の禍を抑え、水の恵みを生かし、次世代と地域に夢と希望のある未来を」というメッセージで講演を締めくくられました。

講演後の質疑応答では、会場からさまざまな質問が寄せられ、皆さまの関心の高さがうかがわれました。

古賀邦雄河川文庫を視察される沖教授

また、古賀邦雄河川文庫を視察された沖教授は、「古賀さんが、川だけでなく水資源、水の利用、水の文化、水の循環にかかわるさまざまな本を長年集めておられることは学生のころから聞いていたが、実物を見る機会はなかった。今回、文庫を拝見し、私が勉強するときに使った教科書や、これぞ名著といわれる水の本、そして入手が難しい『川の現場で誰が何を考えて今の水の循環になっているのか』を記録したさまざまな報告書や冊子などがあり、久留米大学が水に関する資料の中心地のひとつになると思う」と期待を込めコメントされました。

(左から)古賀邦雄河川文庫を視察する沖教授、古賀さん、案内した御井図書館工藤さん
(左から)古賀邦雄河川文庫を視察する沖教授、古賀さん、案内した御井図書館工藤さん

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