学生生活・就職のTOPICS 先端癌治療研究センター主催研究発表会にて学生研究員が初めて発表

先端癌治療研究センター主催研究発表会にて学生研究員が初めて発表

2023年7月20日に本学「先端癌治療研究センター」が主催する若手研究発表会が開催され、医学科6年の皆川貴範さんが学生研究員では初めてとなる発表を行いました。 この発表会は、2014年より年2回(本年度から年に1回)、先端癌治療研究センター3部門(腫瘍免疫学部門、肝癌部門、分子標的部門)の若手研究者が研究報告をする場として開催されています。

皆川さんは、腫瘍免疫学部門の部門長である溝口恵美子教授の指導下で、2020年のRMCPを通して基礎研究を開始し、今回「カフェインの慢性炎症関連性大腸炎発症における役割」というタイトルで口頭発表を行いました。

キサンチン誘導体の一種であるカフェイン(5mM)やペントキシフィリン(100mM)の腹腔内投与が、慢性炎症や上皮の癌化を誘導・促進するタンパクであるChitinase 3-like 1(CHI3L1)の発現および活性化を阻害することにより、Azoxymethane(AOM)誘発性大腸癌マウスモデルにおける大腸癌発症を有意に抑制した研究結果を発表しました。しかし、CHI3L1の発現を抑制できない超低濃度(0.17mM)のカフェインをスクロース(砂糖の主成分)と共にマウスに経口摂取させると、通常では発癌しないデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性慢性大腸炎モデルにおいて潜在的な腫瘍形成作用があることもわかり、この驚くべき結果を自らの経験をもとに語ってくれました。

これらの結果から、カフェインには濃度の違いによって抗炎症作用、およびこの作用と相反する腫瘍形成促進の両面があることがクローズアップされ、今後、患者数が増加の一途をたどる大腸癌における治療および予防の選択肢を模索するためのカギとなる優れた研究報告でした。